淡麗辛口ブームの火付け役!「越乃寒梅」石本社長が考える「淡麗辛口」の今は?
掲載
いつの時代も流行に流されず「前の年よりうまい酒」をモットーにする石本酒造㈱。代表銘柄「越乃寒梅」は日本酒を飲まない人でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?というもの、越乃寒梅は昭和40年代に淡麗辛口ブームの火付け役となり、幻の銘酒と謳われたからなのです。
しかし近年。海外での日本酒ブームや趣向の多様化で様々な味わいの日本酒が多く造られるようになってきました。「淡麗辛口はもう古い!」などと言われることも。。。
そんな中、石本酒造は2016年に45年ぶりとなる新商品「越乃寒梅 麗(さい)」を発売し、この年の全米日本酒歓評会で吟醸部門金賞を受賞しました。
この麗も、すっきりとした軽快で癖のない味わいで、いわゆる淡麗辛口のお酒と言っても間違いではないかもしれませんが、やはりこれまでのドライな淡麗辛口とは少し違う印象を受けます。そこで、新潟の淡麗辛口を牽引し守り続けている石本龍則社長に「越乃寒梅の淡麗辛口とは何か?」お話をお伺いしてきました。
「淡麗辛口」という言葉を大切にしたい
一口に淡麗辛口と言っても百人百様の感じ方があると思いますので、近しいところでの共通の表現言葉として使ったりしますが、付属の言葉も添えながら、ユーザーへの誤解が発生しないようにしています。新潟清酒は淡麗宣言をしておりますので。
そして淡麗辛口の中にも他酒蔵やその種類によっても千差万別あることを理解して頂けたらと思います。
明治のはじめ頃、全国的に甘口 志向であってどの蔵も甘めだったそうです。灘の酒が日本酒度-8、比較的辛口と言われても-3くらい、新潟も甘口だったけれども他県から見れば比較的辛口傾向だったと聞いています。
中でも当社は筆頭になる位置にいたそうです。当時は、精白も今ほど白くないので、酒に雑味が出てしまう。そこで甘くすれば飲み易かったとか(同じようにお料理も砂糖を足すと食べやすくなる)当社は、スッキリとした綺麗な酒を作りたい一心で、良質な酒米を買って精米歩合もどこよりも早くから磨いてき、コストもかけてきました。
飲み手自身がどう感じるか。越乃寒梅らしさを感じていただき、食との調和(食の特徴をお酒がマスクしない前に出過ぎない酒)や、主役の食が立つよう脇役をしっかり務められる酒でないといけないかなと。
先々代は水のように飽きることなく飲める酒が良酒であると言っていました。要するに、飲み手にストレスを感じさせない。悪い特徴よりも出過ぎた特徴を持たない、なんだかわからないがスイっと飲めるようにしてきました。その酒を造るには一重に纏められないこれまでの歴史とプロセスがありあります。
結果、皆様が淡麗辛口と表現される所以かもしれません。でも、そう言って親しんでもらえるようこの言葉を大切にしなくてはいけませんね。
淡麗の中にも米原料の日本酒として本来の旨味と上品な品格を持ち合わせたいのが越乃寒梅です。
私が思う上品な品格とは、飛び抜けた特徴だけが受け入れられるのではなく、非の打ち所がなく、例えようのない良さを感じ得る様子を追求したい。それはこれまで越乃寒梅がしてきたことで、これからも更に研ぎ澄ましながら追求していきます。
その考え方が人様からどのように表現されるかわかりませんが、淡麗辛口のワードと共に淡麗な酒の造りの難しさを理解して頂き、新潟の代名詞として唱えてもらえるならばありがたいです。
次回は越乃寒梅の新たな取り組みと共に、石本社長の意外な素顔もご紹介したいと思います!