酒蔵で食フェス開催!笹祝酒造6代目笹口亮介さんにインタビュー
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新潟で活躍しているシェフたちが集まり2014年に結成したチーム「ll Laboratorio Di Cucina Niigata」(イル ラボ ラトーリオディクチーナニイガタ)通称「ラボクチ」。チームの特別顧問を務めるのは東京南青山にお店を構えるイタリアンの重鎮・山田宏巳シェフです。彼らの活動内容は主に料理の研究、生産者や酒蔵へ視察、食イベントの開催など。そして今回、2018年5月6日には初の食フェスを酒蔵で行いました。会場となった酒蔵は、新潟県西蒲区にあります笹祝酒造株式会社。シェフチームと酒蔵、そしてワイナリーや地ビール会社を巻き込んでの一大イベントはどのようにして実現したのでしょうか?若き蔵元6代目笹口亮介さんにお話しを伺いました。
笹祝酒造/新潟市西蒲区
笹祝酒造は、新潟市の西蒲区(旧巻町)にあります。この西蒲区は5つの酒蔵、6つのワイナリー、そして日本初の地ビールを造ったエチゴビール株式会社などを有しています。
醸造が盛んなこの西蒲区で、100年以上の歴史をもつ笹祝酒造の6代目が笹口亮介さんです。
彼は昨年、長い間使用していなかった貯蔵タンク蔵などを自分たちの手でリノベーションし、初の蔵開きを開催。これまでの笹祝酒造になかった新しい取り組みを積極的に行っています。
蔵元6代目笹口亮介さんにインタビュー
そして今回は、地元のシェフやワイナリー、地ビール会社を巻き込んでの食フェスをリノベーションした蔵で開催しました。その経緯からお伺いしたいと思います。
笹口 昨年行った蔵開きに、同じ西蒲区で割烹を営むラボクチのメンバーさんに出店して頂いて、その時構想を膨らませて頂き、お声がけ頂きました。この地域には他にも酒蔵はあるのですが、うちはワイナリーから一番近くの場所にあり、ワイナリーの皆さんもラボクチと強い繋がりがあったりして…そこからいろいろ繋がりました。
―蔵をリノベーションしたのは、こういったイベントを開催することが目的だったからですか?
笹口 いえ。最初は何も考えていなかったです。ただ、使っていない40本もの貯蔵タンクとその蔵をずっとそのままにしておくのは勿体無いと思っていて…タンクを全部撤去したら何か見えてくるものがあるのではないかと思ったのがリノベのきっかけで、そして地元の人の「蔵の中は見たことがない」という声を聞いて、蔵開きをしようと思いました。とにかく皆さまに蔵に来て頂きたいという想いがあり、その結果、こうして繋がったんだと思います。
―造り手という意味では、蔵も飲食店も同じだと思うのですが、ラボクチとイベントをしてみて彼らから感じることはありましたか。
笹口 ありましたよ!お料理にはストーリーや表現力がありますよね。ただ良い物を作って「どうですか?」ではないんです。それはお酒も一緒です。ただ、酒蔵はお客様との距離が遠いんですよ。間には問屋、酒屋、飲食店がありますから。でも、こうしたイベントで実際に目の前でお客様の喜んでいる姿を見ることは造り手の大きな励みになります。蔵で働いている皆にも、自分たちがやっている仕事は「多くの人を幸せにする仕事」だということを感じて欲しいです。
―これからもこのようなイベントを開催する予定ですか?
笹口 はい!ラボクチとのイベントではないですが、今年も7月7日に蔵開きを行いますし、今後もただお酒を造るだけでなく「体験を与える」ということを一生懸命やっていきたいと思っています。そしてこれはイベントをやるうえでのこだわりなんですが、会場には必ずキッズスペースを設けているんです。
―確かに今回もキッズスペースがありましたね。それはなぜですか?
笹口 小さい頃、酒蔵で遊んだという記憶を持つ「新潟の大人」になって欲しいから。新潟の人って大人なると関東などに出て行く人が多いじゃないですか?でも、そういった新潟の記憶があると、将来新潟に戻って来てくれるし、そうでなかったとしても、県外の人に新潟をアピールしてくれるようになるんです。子供の頃の原風景っていつまでも残っていますよね。
―言われてみればそうかもしれません!
笹祝酒造ではこのようなイベントだけでなく、消費者といっしょに酒造りをする体験も行っています。
今回のイベントでも消費者の皆さまと一緒に仕込んだお酒がありました!ただ、こちらは発泡しすぎてしまったお酒だとか。しかし、こうした失敗も、他にはない「特別な一本」、「特別な体験」として私たちの記憶の中に深く刻まれていくのだと思います。