「一献盃」で味が変わる!? 話題のひやおろしにぴったりの盃を探そう【前編】
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ひやおろしが続々と販売される10月は、日本酒好きがそわそわしてくる季節。美味しい〝ひやおろし〟を手に入れたら、盃もぴったりのものを用意してみませんか? 今回は今年おすすめの〝ひやおろし〟3本を今話題の「一献盃」で飲み比べてみました。
「一献盃」とは?
「一献盃」とは、美濃焼の製造を手がける株式会社カネコ小兵製陶所から発売されている盃のこと。盃の形は4種あり、それぞれ飲んだ時の香りや味わいに特徴があるのだとか。そこで今回は、3本のひやおろし(あきあがり)を4種の一献盃で飲み比べ、自分なりの「ベスト盃」を探してみました。
ストレート型「すっきり、さっぱり」のみたい形
ラッパ型「とにかく香り」を楽しみたい形
ワングリ型「しっかりと旨み」を味わいたい形
ツボミ型「濃厚をちびちび」とやりたい形
前回に引き続き、検証するのはこの2人!
検証に参加したのは、前回に引き続きのんだくれライター津川と、「最も新橋が似合う酒造関係者と噂されるW杜氏。それぞれのひやおろしに対し、二人はどの「一献盃」を選ぶのでしょうか?
先月、三十路に突入した途端に蕁麻疹が出ました。進化は感じないけど、衰えだけは感じる今日この頃。
訳あって2〜3日酒を断ってみたら、ご飯が美味しくて仕方ない。やっぱり米最高と思いつつ、お腹まわりのお肉が気になる今日この頃。
【検証1】信州銘醸 〝瀧澤 乙未(きのとひつじ) ひやおろし〟
【スペック】
・アルコール分 17度以上18度未満
・原材料名 米(国産)・米麹(国産米)
・精米歩合 55%
・使用酵母 自家培養酵母
・仕込み水 黒耀の水
・日本酒度 ±0
・酸度 1.7
【特徴】
花の蜜のような、華やかな香りが特徴的。飲み口はまろやかな旨味が感じられる。余韻に微かな苦味が感じられるのは、瀧澤の特徴か。
〝瀧澤 乙未 ひやおろし〟にぴったりの盃、発表!
ライター津川(以下、T):決まりましたね? それでは、いっせーのーで!
W杜氏(以下、W):ラッパ型!
T:ワングリ型!
W:見事に分かれましたねえ。
T:そうですね〜、面白い!
爽やかな「カプロン」系の香りも、度を越すと……
T:どうしてこちらを選んだんですか?
W:ラッパ型だと「瀧澤 ひやおろし特有の華やかな香りが損なわれない。ツボミ型、ストレート型だと香りが「塊」で押し寄せてくる感じ。「良い香り」と感じるためには、香りの濃度が重要です。強い香りが適度に空気と混ざり合うことで、「良い香り」と感じられるんですよ。
T:ん〜、イマイチぴんとこないんですが……。
W:わかりやすくいうとですね。津川さんが好きな、リンゴのような爽やかな甘酸っぱいカプエチ(カプロン酸エチル)の香りは、濃度が強すぎると1日履いた靴下みたいな「ムレた臭いがします。
T:ええええ! ちょっとやめてくださいよ!
W:いや、本当の話ですから(笑)
T:でも、そう言われるとわからなくもないような……。
W:そうでしょう (自信満々) !
T:あんまりわかりたくなかったですけど……(げんなり)。
盃の形だけで変わるのは、香りだけじゃない!
T:私の決め手は後味ですかね。ワングリ型が一番エグミが少ないような気がしました。
W:なるほど。
T:形の違う盃でも、同じ酒なら上立ち香以外はそんなに違いはないのかな〜と思っていたんですが。こうして比べてみると、盃の形が後味にも影響しているような気がします。
W:それは盃の形によって、酒が触れる舌の「場所」と、舌への「触れ方」が変わるからかもしれませんね。
ポイントは舌の「場所」と「触れ方」
W:現在は、味覚地図(舌の場所によって得に感じられる味覚が異なること)は科学的根拠がないと否定されています。でも、僕の感覚では舌の場所によってやはり後味は変わってくるように感じますね。
T:確かに……。利き酒のときは酒を舌で転がして「舌全体」で味を感じるように、って教わりました。
W:盃の形による酒の舌への「触れ方」についても、感じる味わいは変わるでしょうね。酒がふわっと広がりながら触れるか、直接的にピンポイントで触れるかでは、大きく違いますから。
残るひやおろし2本にぴったりの「一献盃」は!?
続いては、奥の松酒造〝奥の松 ひやおろし〟と三浦酒造〝豊盃 あきあがり〟を「一献盃」で飲み比べします。後編をお楽しみに!