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酒と鮨の千一夜 ~第十三夜・TOKYOと江戸前を巡る五輪前夜①~

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いよいよ東京オリンピックを1年後に控えた2019年夏の夜は、「松みどり2019 S.tokyo」と江戸前の代表的な魚、新子(小鰭)鱚を二夜に渡りお届けいたします。第十三夜は新子です。七月二十日土曜日高松、すし秀カウンターよりお届けいたします。

十年くらい前の八月真夏、急な研修で東京へ行くことになった。知り合いの方にホテルを頼むと木場のホテルを取ってくれた。学生時代四年間を東京で過ごしたが、深川、木場方面は行ったことがなく、江戸前に触れたく楽しみだった。江戸前の大衆向きの鮨屋か天麩羅屋を物色したが、案の定、良い感じの大衆向き鮨屋があった。色々と食べて、おもむろに聞いてみた。
私「あの~新子はないのですか?」
大将「新子は七月の半ば二週間くらいだね」
私「そうですか。やっぱ、高いですよね。」
大将「うちは、ほんまもんの江戸前を安く食べさせてあげるよ。来年、電話してみてよ。」
それはそれは、凄いと思い、翌年、電話してみたが、とてもじゃないが、手に入らなくなったとのことだった。
ときは、流れて、昨年、少し鮨にはまって、色々と地元のお鮨屋さんに行くうちに、高松沖、丸亀沖の小鰭、新子は東京、銀座へ行っちゃっているとのこと。そう言えば、ままかり(わち、さっぱ)は香川県ではよく食べるが、小鰭はそんなに重宝されていないかなって、つくづくと思った。それでも八月の終わりに丸亀沖と高松沖の新子をいただく機会に恵まれた。
そして、すし秀で来年2019年こそは、初物七月の新子をいただくぞと誓いあった2018年の夏の終わりであった。
同じ頃、東京では、

2018年9月30日東京新聞より

酒と鮨の千一夜 ~第十三夜・TOKYOと江戸前を巡る五輪前夜①~

創業193年の中沢酒造(松田町松田惣領)は10月1日、109年前に見つかった酵母を使った新酒「松みどり純米吟醸S.tokyo」を発売する。低迷する日本酒需要を高めるため、大学の研究室で眠っていた酵母から若者や女性にも飲みやすい日本酒を造った。 (西岡聖雄)
一九〇九年に発見された酵母で、東京農大が研究保存していた。これまで日本酒製造に使われたことがない酵母という。同大卒で新たな日本酒を模索していた中沢酒造の十一代目、鍵和田亮(あきら)さん(32)が恩師の門倉利守・同大准教授に相談し、酵母を分けてもらった。
この酵母を発見した故・中沢亮治農学博士の名字と社名が同じで、「0024」という菌株の番号も会社の電話番号の下4けたと一致。杜氏(とうじ)でもある鍵和田さんは「不思議な縁を感じた」と、二年前から商品化を進めてきた。
通常の日本酒用酵母に比べてゆるやかに発酵するためアルコール度数が低く、糖分も多い。甘口の白ワインのような日本酒という。中沢さんは「若者や海外の人にも飲みやすい狙い通りの味」と話す。世界進出の願いを込め「トーキョー」を冠した銘柄とし、ワインボトルに多い黒色ブルゴーニュ型瓶に詰めた。二〇二〇年東京五輪後、創業以来初となる輸出を目指す。
農林水産省によると、漸減する日本酒の出荷量は近年、五十万キロリットル台とかつての三分の一。半面、日本食ブームに乗り、昨年の輸出は二万三千五百キロリットル、百八十七億円で、ともに八年連続で過去最高を更新した。
二〇一三年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に和食文化が登録後は日本酒人気に拍車がかかり、中沢酒造へも三年前から年百人以上の外国人が来店するようになった。
中沢さんは「外国人来店客や都内での試飲会を通じ、さらに飲みやすさを追求したい」と意欲を燃やす。
七百二十ミリリットル入り税込み二千二十円。今年は二千本限定。

そして迎えた東京オリンピックを一年後に控えた2019年七月初め、先ずは新子。なんと地元讃岐前初物は1㎏あたり15万円とのこと。サザンオールスターズの夏をあきらめてを口ずさみ、さらっとあきらめた。
そして、三週間の時が経ち、いよいよ値段が落ち着き、江戸前の代表魚新子は熊本天草産新子十四枚(五枚付け二貫、四枚付け)と2020年東京オリンピックに向け日本酒のアピールも込めた一本,「松みどりS.tokyo2019」はすし秀カウンターで出会った。上品な甘みと爽やかな酸味、低アルコールで柔らかく軽やかな飲み口の日本酒は新子の滑らかな甘さを一層引き立てる。

以下、サカマ図解より新子の項を抜粋いたします。
夏しか食べられないのが新子ですね。6~7月に旬を迎えます。江戸っ子は新子を食べないと夏が来ないとまで言います。
夏場の限られた時期しか市場に出回りません。走りの時期にはとてつもない高値で取引されます。江戸前のすし屋では欠かすことができない寿司ネタです。

新子はコハダの稚魚ですが、東京のすし屋にとっては数ある寿司ネタの中でも最もこだわりを持って、大切に扱う魚です。

江戸っ子の気質を表す「女房を質に入れても初鰹を食べる」という意地と誇りと見栄の世界が、東京のすし屋の「新子」に対する世界ではいまだに生き残っているようです。

新子の初物としての仕入れ値は、1㎏3万円~5万円の値がつくこともあるのです。この値段が2週間ほど続くのですからすごいですね。

コハダの卸値は1㎏1000円~3000円ほどですが、3000円となると敬遠されるようになります。新子との価格差はこれほど大きいものがあるのです。

新子は生後4か月ほどの稚魚です。寿司職人は新子の初物が入ると快い緊張感を覚えるといいます。サイズが小さい繊細な魚です。

新子の仕込には寿司職人の技のすべてが集約され、寿司店の意地と誇りとメンツにかけてお客の舌を唸らせようと努力するのです。

新子は出世魚です。シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと名前が変わります。
すし屋で新子が食べられるのは6~7月頃しか食べられません。

新子のおいしさを表す言葉に、「夏の初風が吹き始めるほんの数日間、新子はすし屋に登場する」という表現がなされます。

新子は体長およそ6~7㎝までの幼魚。
コハダは体長がおよそ12㎝までを言います。
ナカズミはおよそ15~16㎝くらい。
コノシロは体長が17㎝以上の成魚のことです。

新子は小さいけれど一番の高級魚です。次のコハダはぐんと値段が落ちます。その後ナカズミはもっと値が下がり、コノシロに至っては大変廉価に手に入る魚です。

新子からナカズミまではすし屋で大変な人気ですが、コノシロになると鮨には使いません。
コノシロは骨が多いが脂ののりがあって、塩焼きがおすすめのようです。

コノシロの「なれ寿司」もお勧めです。なれ寿司の本場和歌山県御坊市では、時間をかけて熟成させたコノシロを、なれずしにします。最高の「なれ寿司」を試してみたいものですね。

新子という呼び名は、いろんな魚にあるということが分かりました。本来新子とは汎用的な呼び名であり、関西地方で新子と言えば、「玉筋魚(いかなご)」の幼魚を指します。

この新子をボイルして乾燥させると、「かなぎちりめん」となり、このかなぎちりめんを佃煮にすると「小女子(こうなご)」となります。いかなごの幼魚を生のまま佃煮にすると「いかなごの釘煮」になります。

ほかにもアオリイカの稚魚なども新子と呼ばれるようです。調べればもっとたくさんあるかもしれませんね。

おしまいのページで・・・

今年は三月半ばから七月終わりまで水曜日計15回高知へ研修へ行ってきた。御多分にもれず、毎回高知の美味い魚と旨い酒をいただいてきた。三月まだ花冷えの頃、七月は高知は南国独特の黒潮が空に映ったような濃い青空が楽しみだった。残念ながら七月はあと一日残しすべて梅雨空だった。しかし美味いものは食った。寒ぐれにはじまり,うつぼ、金目鯛、うるめいわし、初鰹、いさぎ、そしてとどめは新子。そう高知、特に須崎周辺はメジカ、(ソウダガツオ)の幼魚を新子と呼ぶ。以下、須崎市HP観光案内からメジカの項を抜粋いたします。

いつでも食べれるわけじゃない。
「メジカの新子」は、須崎民の「夏の風物詩」

メジカとは?

地元の愛称で、ソウダガツオの事。目と口の距離が近いことから「目近」とも書きます。メジカの新子を食べられる時期が8~9月までの2ヶ月と短く、獲ったその日でないと食べられないほど痛みやすく、そのため、須崎市以外ではほとんど流通されない貴重な魚です。体調は15~25cmほどで、関東地方では「メジ(若魚)」とも呼ばれています。

新子とは?

特に生後一年未満の幼魚の事。地元の総称で「ヨコの新子」や「メジカの新子」などと呼びます。

新子の食べ方

ぎゅっと絞った『ブシュカン(柑橘類の一種で、正式名称は餅柚(もちゆ)』の汁にその青い皮をすったものを一緒に入れ、醤油を合わせたポン酢に、三枚におろしてぶつ切りにした新子を、ざぶんとつけて食べるのが一般的です。もっちりと押し返してくるような食感は新鮮な新子ならでは。酒にも合いますが、シメにはその食べた後の汁を熱々の白飯にかけて食べるのが通の食べ方。ツマとして添えるのはこの時期ならではの『リュウキュウ』。沖縄から伝わってこの名になったと言われていますが、いわゆるハス芋のことで、高知では芋茎(ずいき)の部分を食べます。皮をはいで、千切りにしたリュウキュウは、シャキシャキとした食感で、さっぱりとしたポン酢によく合う夏の名脇役です。

本日、おしまいのページは須崎魚河岸魚貴追手筋店での
「新子」の握りでお別れいたします。

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ライター プロフィール

日本酒ライター 髙松 巖

髙松 巖

香川県丸亀市で日本酒メインのダイニングバー「星の川」をやってます。こちらでは、季節感溢れる日本酒の魅力をお伝えできたらと思います。よろしくお願いいたします。