酒と鮨の千一夜・~第十四夜・TOKYOと江戸前を巡る東京五輪前夜②鱚~
掲載
令和元年2019年七月十三日はあとで知ることになるが、2020年東京オリンピック内定第1号が決まった日であった。
その夜高松すし秀カウンターにて
「松みどり純米吟醸S.tokyo2019」を目にすることになる。その開発趣旨等については前回第十三夜にて東京新聞記事等ご参考いただきたい。簡潔に整理すれば
①東京オリンピックを機に世界へ発信したい意向をもっての醸造開始。
②幻の酵母「S.tokyo」の109年ぶりの復活
③そのフルーティで飲みやすいテイストは世界基準である。
などと言うことになる。
鮨屋のカウンターで目の前にTOKYOと言う文字を目にすると、やはり「江戸前」と言うキーワードが頭をちらつく。
鱚(きす、キス)
学生時代を四年間を東京で過ごしたが、四国出身の田舎学生であり、小粋な江戸前の鮨は食らったことはない。やっと最近になり「やっぱり小鰭。夏のこの時季新子」と江戸前を感じるよになったが、ひとつ大きな疑問が鱚の握りを江戸前ではあまり聞かないこと。すし秀では、私のたっての希望もあり、湯引き昆布〆&酢〆で美味しくいただいている。
今宵は「松みどり純米吟醸S.tokyo2019」と鱚の握りを食べながら、東京五輪を夢見る前に江戸前の鱚について考察してみたい。
以下、DIAMONDO onlineより、鱚の項抜粋
魚偏に「喜」と書く鱚は、縁起の良い魚として、徳川将軍の朝食には欠かせない食材でした。
将軍は朝五つ(午前8時頃)、中奥《なかおく》と呼ばれる将軍の住居スペースの御小座敷で、髪を結われながら食事をします。
一の膳には汁、飯、向こう付け(刺身や酢の物など)、平《ひら》(煮物)が乗っており、二の膳には吸い物と皿(焼き物)。
この皿の焼き物が、鱚の塩焼きと漬け焼きの二種類が乗った「鱚両様」と決まっていました。
ただし、毎月1日、15日、28日の皿には鱚ではなく、尾頭付きの鯛や平目が乗りました。
鱚の語源は、性質が真っ直ぐで飾り気がないという意味の「生直《きす》」からだとか、身が純白で味が淡白なので「潔《きよし》」から来ているなど、いくつか説がありますが、いずれにせよ清いイメージから、「神様が好む魚」とされていたようです。
そのため、疫病避けや願掛けには「鱚断ち」をするのが効果的、とされており、生や昆布〆でいただいてもおいしい鱚なのに、江戸前の鮨屋の多くは鱚を鮨種にしなかったとか。
一方、天麩羅の種として欠かせないのは現代も同じで、かつては江戸湾にたくさんいた鱚は、鯊《はぜ》、雌鯒《めごち》と並んで、「江戸前の三大天麩羅種」とされていました。
通常は鱚と言えば、背が淡い黄色をした白鱚《しろぎす》を指しますが、当時は背が青みがかった青鱚《あおぎす》(矢鱚《やぎす》とも言う)もいて、「食べるなら白鱚、釣るなら青鱚」と言われていました。
白鱚の身は繊細で上品で癖がなく、味では軍配が上がりますが、白鱚釣りは子どもでもできるほど簡単なので、釣り好きには物足りませんでした。
その点、動きが機敏な青鱚は、釣り人にはたまらない獲物だったのです。以上、DIAMONDO onlineより抜粋
さて、すし秀カウンター、今回の鱚の握りは湯引き、昆布〆と江戸前の鮨の手間を掛けてもらって、その上に木の芽も添えていただき、山葵、酸橘とさっぱり上品に深い鱚の夏の初めの味わいに梅雨の不快感を吹き飛ばす爽快感をいただいた。徳川将軍献上時代の江戸前からいよいよ来年の東京五輪のTOKYO まで夢はぶっ飛んでいった。
おしまいのページで・・・
酒と鮨の千一夜、十四夜を迎えた。十四と言う数字にこだわれば、ユーミンの「十四番目の月」を一番に思い出す。
「次の日から欠け始めてしまう満月よりは14日目の月が好き」という。何事も満ち足りる一歩手前が一番良い的な意味あいがあると思う。アルバムのタイトルでもあり、同名の曲も含まれている。以下、収録曲を列記するが、Wikipediaを読むと一曲一曲に歴史と思い出があり、泣きそうになる。一曲だけ選ぶとすれば、私は、「晩夏(ひとりの季節)」が好きだ。
1. 「さざ波 -Ripples-」
2. 「14番目の月 -The 14th Moon-」
3. 「さみしさのゆくえ -Where Does Loneliness Go-」
4. 「朝陽の中で微笑んで -In The Morning Light-」
5. 「中央フリーウェイ -Chuo Freeway-」
6. 「何もなかったように -Like Nothing Ever Happened-」
7. 「天気雨 -Sun Shower-」
8. 「避暑地の出来事 -A Summer Place-」
9. 「グッド・ラック・アンド・グッドバイ -Good Luck And Goodbye-」
10. 「晩夏(ひとりの季節) -Late Summer (The Lonely Season)-」
晩夏「ひとりの季節」は、NHK銀河テレビ小説ふるさとシリーズ「夏の故郷」「幻のぶどう園」の主題歌として、テレビで流れていた。私が中学2年生の夏、1976年の夏であった。小学生までは、夏は楽しいだけのもの、遊び狂うだけの夏であった。それが、中学へ入った夏に一変した。夏の終わり切なさ、胸を締め付ける寂しさ。幼少期から思春期への階段を上り始めた頃だった。ドラマにも惹かれたが、それ以上に主題歌に胸を熱くした。そんな夏の思い出がそこにあった。今回、Wikipediaを検索して、初めて知ったことは、この歌の舞台が秋田県横手であることを初めて知った。まだ、未踏の地であり、うまく想像できないが、少なくとも自分が頭に描いたふるさとの近所の丘ではなかった(笑)
おしまいのページ、秋田県横手の銘酒、「まんさくの花」でお別れです。三年ほど前にお友達から秋田土産にいただいた。県内限定と空港限定だったと思う。その頃、十四番目の月、晩夏に触れていれば、また違った楽しみ方があったかもしれない。