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酒と鮨の千一夜・第十二夜~梅雨の王者・伊佐木&お酒のおばけ・文佳人 夏純吟~

掲載

手際よく 握りて旬の 梅雨鶏魚(いさき)
安川 椢雲

酒と鮨の千一夜、第九夜にて「磯の王者」として、石鯛。
また、第九夜おしまいのページで・・・「陸の王者」慶応をご紹介した。
今回のいさぎはまさに「梅雨の王者」として、ご紹介したい。
合わせるお酒は「お酒のおばけ」のジャケットが人気の高知・文佳人 夏純吟。鬱陶しい梅雨を吹き飛ばしたい。

文佳人 夏純吟

酒と鮨の千一夜・第十二夜~梅雨の王者・伊佐木&お酒のおばけ・文佳人 夏純吟~

文佳人を造っている株式会社アリサワは明治10年創業で、現在5代目となる有澤浩輔氏が杜氏として、また代表取締役としてお酒を造っている蔵元です。
代表銘柄である「文佳人」は、土佐藩執政の野中兼山の娘であり、「お婉さん」と呼ばれた女性の献身的な生涯を称え、「文の佳人」、手紙・文・詩歌・広くは学問に秀で、教養にあふれた美人である、と記念したのです。
石数を増やすよりも、しっかりしたお酒を造ることに重きを置き、「文佳人」に関しては、少量の仕込・無濾過・瓶燗火入れ後-5℃貯蔵というこだわりを持っています。
「文佳人 夏純吟 720ml」は高知県土佐山田のアリサワ酒造さんが醸し出す「夏限定」の希少な純米吟醸酒。
日本酒度±0、精米歩合50%と優しい口当たりながら淡麗なスッキリとした飲み口と仕上がり夏の一夜にピッタリの清酒です。ラムネの様な吟醸香とスッキリ、サッパリな夏のお酒はよく冷やして、夏の夜の極楽酒です。
可愛い「お酒のおばけ」ラベルが大人気の夏酒ですね。

梅雨の王者・伊佐木(いさき・いさぎ)

酒と鮨の千一夜・第十二夜~梅雨の王者・伊佐木&お酒のおばけ・文佳人 夏純吟~

もう十年もひと昔前梅雨時の割烹カウンターにて、
「年暮れから正月は鰤、
桜の頃までは鯛、
青葉の頃は鰹、
梅雨前は鰆、
梅雨が明けたら鱚が待ち遠しいよ」
などと自分好みの魚暦を語ったものだ。
「梅雨は魚がなくて困る」と知ったか振りで話すと、
当時馴染みの割烹の花板が、
「梅雨に旬を迎える魚もございますよ」
私「え~何、何、?」
花板「いさぎですよ。梅雨時に脂が乗り美味しくなりますよ」
私「あ~高知でいた頃よく食べた!」
花板「では、来週の終末にでも取り寄せておきましょう」

三十年ほど前高知にいたときは、よく食べた。
当時は香川県ではほとんど目にしたことはなかった。
そんなこんなであれから四半世紀以上、
久々の高知でいさぎを食する機会に巡り会えた。
それも初の焼き切りだ。焼けた皮と生の身の間の脂が旨い。

以下、ウオダス日本の旬・魚の話・いさきより抜粋

伊佐木(いさき)

酒と鮨の千一夜・第十二夜~梅雨の王者・伊佐木&お酒のおばけ・文佳人 夏純吟~

初夏の魚として釣り人に人気がある。『大和本草』には、「早く腐り易い・・下品なり」、また『日東魚譜(にっとうぎょふ)』には、「野人(下々の人)だけがこれを食う」などと書いているが、どうして、どうして、臭みもなく美味しい魚である。昔は、漁師以外に新鮮なものが手に入りにくかった為であろう。
水温が下がる秋から春は脂が落ちて身がバサバサになり、まるで別の魚のように味も落ちる。これほど旬がはっきりした魚も珍しい。

手際よく 握りて旬の 梅雨鶏魚(いさき)
安川 椢雲

命名

「伊佐木」や「伊左幾」、「鶏魚」などと書く。
イサキは、外洋の岬付近や沖合の小島など、潮早い荒波の礁が棲息場所で、「魚岬(いさき)」と呼ぶようになったという。また、磯(いそ)と魚(き)からなる転訛語という説もある。
その他、中国でも鶏魚という名があるが、これは、第一背鰭(せびれ)の棘が3~4本鋭く立ち、鶏のトサカに似ているところから。

地方名

昔から近場の磯で親しんでいるせいか、名前も豊富である。「シャミセン」、「ツンテン」は各地で通用し、三本の縞からの連想であろう。
イサギ(関東)、クロブタ・クッカ(神奈川)、コシタメ(静岡)、トビ(三重)、カジヤゴロシ(和歌山)、イセキ(高知)、ハンザコ(宮崎・鹿児島)、マツ(奄美)など。
英名 Chicken brunt
スズキ目イサキ科イサキ属イサキ
仲間にはコショウダイ、サトダイ、シマセトダイ、ヒゲダイ、ヌマガシラなどがいる。ヤガタイサキ(コトヒキ)やシマイサキにはイサキの名がつくが、シマイサキ科に属し、浮袋で音を出すことが出来る。

形態

側扁形で左右の目の間が狭い。全体に黄色味を帯び、腹部は銀色で、背部には濃い褐色の縞がある。この縞は、幼魚期には特に明瞭であるが、成魚になると不鮮明になる。
体長は最大で40cm、重さは1kgぐらいになる。

分布

東北以南から東シナ海、台湾に分布。暖海性の魚で、黒潮の勢力の強い房総から宮崎、及び石川から長崎に至る海域に多い。岩礁地帯の100m以下に棲息する。夜行性なのか、夜間浮上して活発に餌を追う。

産卵

産卵期は6~9月で、浅海の海藻の中に浮遊性の卵を産み付ける。2年魚で6万粒、4年魚で100万粒を産卵し、孵化は受精後およそ1日ぐらい。孵化した稚魚は、浅く静かな湾の中で集団生活を始める。

成長

幼魚は、翌年の春に3cmぐらいとなり、水深5m程度に棲息する。夏には10cm程に成長して岩礁地帯に集まるようになり、アジと混棲して生活する。
2年魚で20cm、3年魚で25cmになり、夏には50mほどの深さの岩礁地帯にいるが、冬期には100mの深場へ移動する。

漁法と養殖

定置網や一本釣りが主流である。
昭和40年に近大で人口採卵が成功し、孵化後52日目に放流された。また、伊豆の下田水産試験場でも成功している。イサキは回遊性でなく沿岸に定着するので、今後放流により増殖が可能な魚である。

麦わらイサキ

「麦わらダイ」は脂の乗ってないタイで、この時期のイサキも「麦わらイサキ」と言うが、タイとは逆に濃厚な脂肪の乗った磯魚として呼び、独特の香で美味しい。

珍味

腹子を指先で取り出して水洗いし、水分を切る。醤油やみりん、酒などで調合した、やや薄味の煮汁でサッと煮る。黄色の真子、白い白子を取り混ぜての煮込みが酒の肴に絶品。
また、腹子をホイルにのせ、うす塩で焼いたものも美味い。ボン酢醤油かレモン汁が良く合い、アサツキや万能ネギ、モミジおろしなど添えると一層味が引き立つ。

鍛冶屋殺し

中骨などは、生のときはノドに刺さりにくいが、煮物や焼き物、蒸し物にすると俄然トゲが強くなるので気をつけたい。
その昔、和歌山にイサキの骨がノドに刺さって死んだ鍛冶屋がいたので、この魚に「鍛冶屋殺し」の名がついたという。現在でも手術を受ける患者がいるとのことで、気をつけたい。

食べ方

やや薄切りにした刺身はタイに劣らぬ美味。またアライにして、梅肉醤油かショウガ醤油もいける。
背ごしは、九州の人が好む食べ方で、皮がついたまま、おろさずに背骨ごと輪切りにして、骨ごとかみ砕くという豪快な食べ方。身が水に触れないため、皮下脂肪が損なわれずに口に入るので美味しい。

いさき釣り 絶壁なせる 礁の鼻
高田 明子

手繰り来て いさきの縞の 黄が躍る
岩崎 英恭

釣り人の 昼餉を磯の 焼きいさき
藤田 志洸

おしまいのページで・・・

酒と鮨の千一夜・第十二夜~梅雨の王者・伊佐木&お酒のおばけ・文佳人 夏純吟~

今回のいさぎの焼き切り握りは、高知市、須崎魚河岸 魚貴 追手筋店にて食した。三十年前香川県でいさぎを食したことは記憶にないが、流通、冷蔵の発達で今では、梅雨時季には、スーパーの店頭にも並んでいる。もちろん、高松・すし秀でも長崎のいさぎを食した。本日、おしまいのページは、すし秀の長崎伊佐木の画像でお別れです。

梅雨の王者・伊佐木

手際よく 握りて旬の 梅雨鶏魚(いさき)
安川 椢雲

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ライター プロフィール

日本酒ライター 髙松 巖

髙松 巖

香川県丸亀市で日本酒メインのダイニングバー「星の川」をやってます。こちらでは、季節感溢れる日本酒の魅力をお伝えできたらと思います。よろしくお願いいたします。