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酒と鮨の千一夜・第二十三夜 〜仁淀川水系を巡る酒と鮨・亀泉純米大吟醸「貴賓」&宇佐もん一本釣り「潤鰯バッテラ」〜

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私事、諸般の事情を鑑み二月半ばより外出自粛を続けて参りました。その間、一昨年来の酒と鮨を振り返り、珠玉の思い出を振り返ってみました。今宵は、土佐仁淀川水系を巡る酒と鮨をご紹介いたします。

先ずは、魚(鮨)、酒の食べ合わせを語る上で、『美味しんぼ』の名作エピソードのひとつである「鮎のふるさと」を抜きには語れません。
この回は山岡士郎と海原雄山が「鮎のてんぷら」で対決するのだが、どちらも甲乙つけがたいという意見が多いなか、京極さんだけが雄山の出した鮎を口にすると突然ポロポロと涙を流し、一瞬言葉を失うほど感激する。
それというのも、雄山の使った鮎が京極さんの故郷である四万十川の鮎だったから……というもの。
その「いい大人が口から鮎のしっぽを出したまま泣いている」という1コマたるや、本当に一度見たら一生忘れないほどの強烈なインパクトであった。
さらに「なんちゅうもんを食わせてくれたんや……」「これに比べると山岡さんの鮎はカスや」のセリフが飛び出して勝負は海原雄山の圧勝に終わるわけだが、あまりに強烈な京極さんのリアクションによって「四万十川」の名が記憶に刻み込まれたという人も多いのではないだろうか?
そして、実際に四万十川の鮎が食べたい! と思った人もかなりいたはずである。しかし、ほんとに言いたいことは、京極さんが幼い頃から食べ親しんだものこそ、本来の味以上に舌と心と脳味噌に感銘を与えたと言うことだろう。あの頃はまだ、自分自身、そんなことは半信半疑であった。最初にそんなことに気付くのは、同じ吉野川水系の貞光川の鮎と吉野川水系の水で作る「芳水・山峡の美禄」を合わせたときであった。徳島県貞光町(現つるぎ町)で三年暮らした。その間に親しくさせていただいた方に、貞光川の天然鮎をたくさん食べさせていただいた。それまで、天然鮎はほとんど食べた記憶はなく、私のふるさとの鮎は徳島貞光川の鮎と言うことになる。その後日本酒バーを始めて、店で貞光川の天然鮎を供するようになって、食べ合わせの良い日本酒を探したとき、やっぱり、同じ水系の「芳水・山峡の美禄」がぴったりだった。おそらく、脳内、あるいは心の奥底に沁み込んだ吉野川水系と言う何かしらの成分が私の体内で摩訶不思議な働きをしたとしか思えない。更に最近になって、高松すし秀にて、讃岐高見島のタイラギ貝柱、塩飽本島の本みる貝を食べるときに口の中に溢れる海の味と匂い。あれは私の体内に眠るノスタルジックな思いを揺さぶり起こす。そう、小学校の6年まで泳いだ、香川県多度津海岸寺の海、同詫間町楠浜の海、いわゆる瀬戸内海でも備讃瀬戸の海の味、香りがノスタルジックに蘇る。京極さんではないが、タイラギの握りの半分が口の中から出したまま感涙にむせぶ(笑)笑っちゃいけませんよ。ほんとの話です(笑)水の流れは同じ山系水系からたくさんの山海の恵みを成分養分として、酒、鮨ができあがる。それこそが相性抜群の酒と鮨の最高の相棒と言えるだろう。
前置きが長くなりました。今宵は、昨年平成最後の三月、高知はりまや町「かもん亭」にて、高知土佐市の仁淀川の湧水で醸す「亀泉」の純米大吟醸「貴賓」と土佐市宇佐漁港に揚がる「宇佐もん一本釣りウルメ」(潤鰯)で作るバッテラの大局的に同じ仁淀川水系の相棒同士の食べ合わせ思い出話です。仁淀川は仁淀ブルーとして、今、日本一の清流として有名です。

1、亀泉・純米大吟醸「貴賓」

酒と鮨の千一夜・第二十三夜 〜仁淀川水系を巡る酒と鮨・亀泉純米大吟醸「貴賓」&宇佐もん一本釣り「潤鰯バッテラ」〜

『亀泉 純米大吟醸 貴賓』は、こだわりの酒造りで評価の高い亀泉酒造さんが、米・酵母・水に徹底的にこだわった、蔵を代表するお酒です。
酒米は酒造好適米の兵庫県産『山田錦』を贅沢にも40%になるまで精米、2種類の酵母を使い丹念に低温でじっくりと醸されています。そして、 水は仁淀川の湧水。
リンゴのようなフルーティな吟醸香は、華やかでありながら気品ある落ち着きを感じ、繊細で優しい
口当たりですが、しっかりとしたコクのある旨みが有るのが特徴的です。爽やかな酸味でキレ味が良く、スッキリした喉越しは飲み飽きせず、特に魚を使った和食とは良く合います。

2、宇佐もん潤鰯バッテラ

酒と鮨の千一夜・第二十三夜 〜仁淀川水系を巡る酒と鮨・亀泉純米大吟醸「貴賓」&宇佐もん一本釣り「潤鰯バッテラ」〜

宇佐もん一本釣りウルメ
特長その一、
網での漁獲ではなく一匹ずつ釣り上げることで、身の美しさと“究極の鮮度”を実現

「一本釣りウルメ」の獲れる高知県土佐市宇佐の漁場は、土佐湾の中央部に位置する黒潮の恵み豊かな場所。そして、西日本最高峰石鎚山系に端を発し、宇佐漁港近くで太平洋に注ぐ仁淀川のたくさんの山の精と黒潮がぶつかる漁場です。
多くの漁場においてウルメイワシは網で水揚げされるのが一般的ですが、宇佐の漁場では一本釣りによる漁のみを行っています。ウルメイワシは非常に繊細で弱い魚なので、網で水揚げされると魚同士が互いにこすれ合い、拒絶反応を示した魚がストレスにより暴れだし、熱を持って身がやけてしまいます。しかし一本釣り漁をすることによって、こすれ合うことなく、鮮度を保つことができるのです。
刺身やカルパッチョはもちろん、つみれ汁などすり身にしても美味。冬になりほどよく脂が抑えられたウルメは、丸干しなどの干物に向いていますが、やはり、刺身、生のウルメイワシは、絶品です。

特長そのニ、鮮度を保つため、人の手で触れることなく、氷水で活き締めするという徹底ぶりです。

 「一本釣りウルメ」はその名の通り、身を傷つけないよう網ではなく一本釣り漁法にこだわっていますが、漁獲する際はさらに独自の工夫が凝らされています。ウルメイワシはその身の弱さから「氷水の中で活き締めするのが一番」と言われるため、漁においては独自に開発した装置(自動針はずし機)を使って人の手に触れることなく釣り上げ、5秒後には氷水の中に魚を入れられるようになっています。水温より高い体温で魚体に触れると魚が火傷して鮮度が落ちるため、この装置の導入により“究極の鮮度”を実現することができるようになりました。
一本釣りウルメの証として、水揚げ後もウロコが残っていること、口に刺さった針から血がまわるため目が赤いことなどが挙げられます。これこそが一本釣りウルメの証であり、鮮度が良い証拠。漁が終わるとすぐさま港に持ち帰り、加工をする際も素早く一気に行われます。

たくさん、書いてしまいましたが、百聞は一見に如かず、まあ、一度ご賞味ください。もちろん相棒は、仁淀川水系をぜひ、合わせてみてください。石鎚山系から降り落ちた山の精とはるか南洋から黒潮に乗って届いた海の精のアンサンブルをお楽しみください。今宵、酒と鮨の千一夜、第二十三夜の相棒は、亀泉、純米大吟醸「貴賓」でした。

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酒と鮨の千一夜・第二十三夜 〜仁淀川水系を巡る酒と鮨・亀泉純米大吟醸「貴賓」&宇佐もん一本釣り「潤鰯バッテラ」〜

第二十三夜、23と言う数字で先ず、一番に思い浮かべるのは、なんと言っても、シカゴブルズ、マイケルジョーダンの背番号です。しかし、ここは、日本プロ野球の開幕が待ち遠しく、私なり、ずうっと好きだった選手をお届けいたします。昭和40年代に中日ドラゴンズで大活躍された木俣達彦捕手です。この時代の中日ドラゴンズはエース星野仙一、常に首位打者争いに絡んだ谷沢健一、史上最高のセカンドと言われる高木守道などのスター選手の陰で、一般的な知名度は低いかもしれませが、玄人には強烈な存在感を持ち合わせた捕手でした。写真はまたまた、昭和48年頃のカルビー野球カードからの登場です。では、その特筆すべき活躍、逸話を列挙いたします。

① 打率も本塁打も稼げる捕手

 木俣を語る上で欠かせないのが捕手としての成績以上に、打者としての成績である。1969年に33本塁打を放った木俣は、王貞治の44本、ロバーツの37本に次ぐリーグ3位の成績を残す。
 さらに1970年には30本塁打で王貞治に次ぐリーグ2位の成績を残す。当時、本塁打王は王貞治の独占状態であり、王の存在を考えなければ木俣が本塁打王のタイトルを獲得していたことになる。
 また、1974年には打率.322を残して王貞治の.332に次いでリーグ2位。この年は、全盛期を迎えていた王貞治が三冠王を獲得している。
 そのため、いつも王の陰に隠れる形にはなったが、いつタイトルを獲得してもおかしくない打撃成績を残したことは事実である。
 打率3割4度。捕手としての3割は史上3人目の快挙だった。2桁本塁打15回は、捕手としては当時の常識を覆す成績で、土井垣武や田淵幸一、野村克也とともに後世に与えた影響は大きい。
 通算安打は1876本。セリーグの捕手として通算最多安打記録を樹立した。もし中尾孝義の入団がなければ軽く2000本安打に届いていたはずである。

②巨人の10連覇を阻む1974年リーグ優勝の原動力

 1974年4月6日、木俣は、広島との開幕戦で安仁屋宗八投手からレフトへ逆転3ランを放ち、チームを軌道に乗せた。
 ペナントは、ONを擁して10連覇を目指す巨人と中日の争いになる。木俣は、この年、首位打者争いに加わるほどハイアベレージを維持し続ける。
 中日は、10月12日に大洋を破って70勝49敗11分とし、71勝50敗の巨人に勝率で上回り、20年ぶりのリーグ優勝を決めた。
 木俣は、打率.322、18本塁打、50打点という好成績を残し、攻守の要として中日優勝の原動力となった。
 一方、それまで9連覇を果たしていた巨人は、10連覇の夢破れ、長嶋茂雄はその年限りで現役を引退した。ひとつの時代の区切りの年であった。

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ライター プロフィール

日本酒ライター 髙松 巖

髙松 巖

香川県丸亀市で日本酒メインのダイニングバー「星の川」をやってます。こちらでは、季節感溢れる日本酒の魅力をお伝えできたらと思います。よろしくお願いいたします。