発売開始30分で売り切れ! 大人気日本酒ボードゲーム「酒魅人」制作者に聞いた開発の経緯
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2000年より東京で開催されている国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」。2012年からは関西地方でも開催されており、カードゲーム・ボードゲーム好きが集まる祭典として知られています。そんな「ゲームマーケット2018春(東京ビッグサイト)」で、開場からわずか30分ほどで完売したゲームが「酒魅人」です。
同作は、日本酒造りの8つの行程「宣伝」「酒米選び」「種麹造り」「米磨き」「アルコール添加の有無」「市場の操作」「神様への捧げ物」に対し、プレイヤーであるそれぞれの酒蔵がドコにどれだけ注力するかを決めて、より良いチップを取り合う、一種の競りゲーム。
米と麹の相性、米の磨き歩合、アルコール添加の有無などで、日本酒の完成度が決まり、主に毎年行われるコンテストで賞を獲る事で勝利点を得ます。3本の日本酒を造り終わった時に、最も多くの勝利点を獲得していた人の勝利です。造った日本酒には名前が付くので、大喜利系のゲームの様な楽しみも同時に味わえます。
ボードゲーム好きはもちろん、日本酒好きなら間違いなく興味津々なゲームを開発した由利真珠郎(以下、由利)さんに製作の経緯を聞きました。
ーー酒魅人製作の経緯を教えてください
由利 元々、オモチャ会社から依頼を受けて、ボードゲームを作る仕事をしていました。依頼で作るとなると制限が多く制作期間も短いため、「自由に満足いくまで時間をかけて作ってみたい」という思いがつのって製作を開始したのが「酒魅人」でした。
最初は販売する気は無く、ゲーム仲間内で楽しめればいいと思っていたのですが、いくつかの試作品を仲間達と遊ぶうちに反応がとても良かったので、思い切って自費生産して販売することにしたんです。
ーーどうやって遊ぶゲームで、面白さはどこにあるのでしょうか?
由利 各プレイヤーが酒造りをする酒蔵の主となって、他の人の動向を見ながら、「酒米選び」「麹菌選び」「米の磨き具合の決定」「アルコール添加の有無」など、お酒を作る工程のドコにどれだけ力を入れるか決めます。それによって「純米」「吟醸」「大吟醸」などが書かれたパーツが手に入り、組み合わせることで自分だけの日本酒を完成させていきます。
プレイヤーが完成させた自慢の日本酒は、品評会に出されて競い合います。一番のポイントはゲームが終わった後、毎回違う出来栄えと名前の日本酒ができることで、約3万通りの日本酒が作れます。
ーーお酒を飲む人飲まない人も楽しめますね。ゲームを作った狙いはなんですか?
由利 ゲームとして面白いだけでなく、遊び終わった後に日本酒を作る工程や「純米」「吟醸」「大吟醸」などの用語の意味を正しく理解できるようにと制作しました。
また、昨今はTwitterやInstagramでお気に入りの写真を公開する人が多いので、出来上がった日本酒を公開して様々な人に見てもらえるというのも、ゲーム後の楽しみとして提供したいという気持ちがありました。
ーーゲームマーケットで発売してから、実際にプレイされた人の反応はどうでしょうか?
由利 発売当初、ネガティブな意見としては「ルールが難しい」「プレイ時間が長い」、ポジティブな意見としては「面白い名前の日本酒ができて楽しい」というものが多かったのですが、最近ではそういった感想は減って「歯ごたえのあるゲーム」という評価が増えたように感じます。
ーー日本酒はやはりお好きですか?
由利 はい、とても好きです。決まった銘柄の日本酒を飲み続けるというよりは、毎回新しい味と出会えるのを大切にしたいと思って飲んでいます。近所に日本酒を半合くらいの小さなワイングラスで提供してくれる日本酒バーがあるのですが、色々な種類の日本酒を日々楽しませて頂いています。
ーー製作にあたって苦労した点を教えてください
由利 本作では、日本酒の味や風味の分類を「涼=涼やか」「豊=豊か」「烈=烈しい」「華=華やか」の4種類で分けていますが、これらを決めるのが一番苦労しました。
由利 甘口・辛口という昔からよく使われる表現に疑問があったので挑戦しましたが、
味という決まったカタチの無いものを、改めて自分の言葉で分類するのは予想以上に大変でした。自分的には、日本酒好きの方にある程度納得していただける表現になったかなと思います。
ーーボードゲームは大好きだと思いますが、日本酒を飲みながらプレイすることもありますか?
由利 残念ながら日本酒を飲みながらゲームをプレイしたことはありません。ただ、実際に日本酒を飲みながら「酒魅人」をプレイする会を開かれている方もいらっしゃるようなので、いずれは作者だということを隠してコッソリ参加してみたいです。
今後、日本酒好きの間でますます広まっていきそうな「酒魅人」。由利さんと一緒にプレイできる機会もあるかもしれません。コミュニケーションツールとしてはもちろん、日本酒造りも学べるので、若い人が日本酒を好きになるきっかけ作りとしても期待。自分のお気に入りの一本を持ち寄って、同じような味をイメージしてゲームプレイするのも楽しそうです。
製作者:由利真珠郎
サークル名:スーパーナンバーワンゲームス
【酒魅人】販売元:テンデイズゲームズ