<Work Rice Balance ~仕事と日本酒と人生を味わうエッセイ 003~> 口と耳で楽しむ日本酒×ロック
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ペアリング。「料理と、相性の良いお酒との組み合わせ」を指す言葉として、最近は少しずつ日本酒居酒屋でも定着してきた。濃いめの味付けの塩辛と、米の旨味が広がる純米酒など、それぞれが自然と相性の良い組み合わせを探して楽しんでいることだろう。
一方、季節を見れば、ジャケットなんて着ている場合じゃない夏の入口。こういうときには、涼やかに飲める日本酒のロックがオススメだったりする。あまり一般的ではないかもしれないが、キリリと冷える分、口当たりは軽快になり、さらに時間が経つと氷が溶けてアルコール度数が下がるので、慣れてない人でも飲みやすくなる。
ペアリングとロックの話をしたところで、邦楽好きの身から提言させていただく。
「料理だけでなく、邦楽ロックにもお酒と相性の良い組み合わせがあるのではないか」
何を言っているのかと首を傾げた方も多いかもしれないが、そのままである。音楽と日本酒のハーモニーを探しながら飲むのが、存外楽しかったりする。
そんなわけで、今回は目と耳でロックを愛でていこう。
【今回のお酒】
山形 小嶋総本店 「洌 純米吟醸 雄町 夏生」
生酒、つまり加熱処理されていないので、味わいはフレッシュ。
夏はスッキリしたお酒が多く出回るが、これは備前雄町という非常に濃い味の酒米を使っているため、パンチの効いた味わいに仕上がっている。そのままだと人を選ぶタイプのお酒だが、今回のようにロックにすれば飲みやすさもグッと増す。
さて、この日本酒に合う曲はどんなものだろうか? スマホから音楽を探し、あれこれ聴いてみる。
そして見つけたのが、こちらの曲。
【今回のペアリング】
2002年にメジャーデビューしたスリーピースバンド、ACIDMANのデビュー曲であり、今なお人気の代表曲。当時は有線でヘビロテされていたこともあり、耳にしたことがある人も多いかもしれない。
タイトルの「赤橙」の名の通り、赤とオレンジが歌詞に登場するこの曲。一見華やかなイメージがあるものの、メロディには極端な起伏はなく、氷が溶けて穏やかな味になった洌と同調する。
ついついテンポに合わせてグラスが進む、軽やかで小気味良いベースライン。
空っ風のような乾いた大木さんのボーカルも、湿気の多いこの時期に聴くとちょうど良いバランスが生まれる。
ひどく曖昧で抽象的な歌詞も、酔った頭なら読み解ける気がして、あれこれ考えながらもう一口。
音に浸って、歌詞に浸って、酒に浸って。うまくペアリングできると、曲を肴に何合でも飲めてしまいそうな錯覚に陥り、慌てて和らぎ水を頼んでみたり。
グラスを片手に、自分がこれまで触れてきた曲をアレコレ聴き直すだけでも楽しい。
皆さんも好きな音楽があれば、お酒と合わせる旅に出てみるのもまた一興。
※撮影場所 飯田橋:坂下良酒倉庫