<Work Rice Balance ~仕事と日本酒と人生を味わうエッセイ 017> Sake on the Rocks!!
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都内の各種解除に伴い、週3~4日は出勤する生活が戻ってきた。ずっと在宅勤務をしていた身の上、始めのうちこそ「出勤するだけで疲れる」という感じになっていたが、2週間もするとそれが当たり前になっていく。家族で行くモールも、同僚と行くディナーも、これまでとは少し違うオペレーションになっているけど、それも次第に慣れていくのだろう。
そんな中、行きつけも休業を挟んでオープンした。暑いこの時期、普通に飲むだけでは十分に季節感を堪能できない。今月は日本酒のロックを味わっていこう。
【一杯目】
長野 大澤酒造「明鏡止水 垂氷(たるひ)」
「垂氷」とはつららのこと。信州の冬の寒さの中、徐々に長さを増していくつららにお酒を見立てた一杯。
山田錦の持ち味である、上品な旨みと甘み。伸びやかな味わいや、その奥に見える力強さは、まさに「つらら」という印象。ちょっと酸が効いているので、後味がかっちりまとまるのも飲み飽きないポイント。
そして、氷を入れて飲むことで、より爽快感が増すのが今回のミソである。
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氷を入れて飲む、オンザロック。ウィスキーや焼酎でよく見るスタイルなので日本酒でやるのはやや邪道に思えるが、夏でもキリッとした日本酒を飲むことが出来るので、意外とファンは多い。
温度が下がるため、のどごしが軽快になるのはもちろん、味わいもシャープに感じられるので、口当たりが重い酒も飲みやすくなる。
店員さんに「ロックで」と頼むと、お猪口に氷を入れてくれる店も多い。水分を補うようにゴクゴク飲めるビールやハイボールに手が伸びる時期だが、今年はロックを試してみてはいかがだろうか。
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【二杯目】
広島 今田酒造本店 「富久長 夏の辛口」
富久長は色んなバージョンを出しているが、今シーズンの夏酒は辛口。
この醸造には、コロナの影響が色濃く反映されている。
外出自粛等の要請を受け、醸造期間を短縮し、計画の変更を余儀なくされて、最後の仕込みの工程を削ったらしい。結果、どっしり重たい味わいではなく、ややライトな辛口になった。
とはいえ、比較的重たい酒ではあるので、ロックで頂く。キンキンに冷えることでやはり口当たりはかなり軽快になり、スッと入ってくるのが良い。キュッと飲みたいときにはピッタリだ。
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カウンターメインの店で飲むと、色々な飲み方を見られて面白い。自分もロックで飲んでいると「日本酒でロックですか?」と声をかけられたりして、会話が弾んでいく。
人の数だけ味わい方がある。それはきっと、仕事も人生も同じことで。