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米からできた酒に造り手の心を想う「喜想菴」女将・鈴木美和【みんなの日本酒】

掲載

米からできた酒に造り手の心を想う

鈴木 美和(すずき みわ)

職業:割烹料理店「喜想菴(きそうあん)」女将

誕生日:8月24日

おうち:愛知県稲沢市

出身:名古屋市

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日本酒のDNA~好きになったきっかけ

千葉県出身で料理人の主人と「喜想菴」をはじめたのが、ちょうど20年前。ご縁あって愛知県稲沢市の地で開店することになりましたが、移り住んでびっくりしたことがたくさんあります。

最寄りの「渕高駅」は無人駅です。田舎には、地域を守るがゆえに”ヨソの人間への厳しさ”があります。苦労しながら、まずはご近所付き合いから学びました。車でないと来店が難しい立地ながらも、流しのタクシーがなく拾えませんし、運転代行サービスは隣の市から呼ぶ必要があります。お客様の事情で一度利用したことがあったけど「次からは来るのが難しい」と断られてしまいました。だから都会のお店に比べて、飲酒していただくのに厳しい立地条件です。それでも開店の頃からお酒を置いてきました。そして仕入のため少しずつ味見している中で、好きになりました。わたしたちが日本料理を通して表現したい「つくり手の心」と通じる部分が「日本酒」に共通したことも、大きな理由かもしれません。

8年前からはより一層力を入れて「日本酒をメインにやっていこう」と決心しました。実は大病をして生死の境に立つ経験をしたのですが、なんとか復帰して見渡したときに「日本人が日本の美しい文化を意外と知らない」ということに改めて気づいたんです。2013年12月に「和食」が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されましたが、これは「食」単体を指すのではなく、生活様式や作法のうえに成り立っています。そのなかには、日本人にとって大切な「米」からつくられ、神聖なものとして民衆の生活に寄り添ってきた「日本酒」も当然含まれるでしょう。

世界から認められたものを「ひとりでも多くのかたに触れて欲しい」という想いから、個室4部屋のみ、1日に大勢のお客様をお迎えできるわけではないですが、10種類前後の日本酒を置くようにしています。酒蔵さんを招いたり、わたしがオススメする日本酒を飲み比べする「日本酒会」をしたり、年に4回ほどイベントも開催してきました。

提供時は、お部屋まですべての瓶を持っていって1本ずつ説明をしてから「どのお酒にしますか?」をおうかがいします。酒蔵さんは、瓶の色やラベルなどの一つひとつまでこだわっていると思いますから、お客様には直接見ていただくようにしています

おうちの日本酒

自宅の床下に保管された日本酒

酒屋さんで店用の日本酒を買うのと同時に、プライベート用酒を購入します。地元の「菊鷹」や、「菊鷹」を生み出した山本克明さんが現在杜氏として手掛ける「光栄菊」、あとは「天穏(てんおん)」「酔鯨」などが入っています。保管は冷蔵庫にこだわらず、常温でよりおいしくなる「長珍」「勲碧(くんぺき)」「誠鏡」なども好きです。

お酒が飲みたくなる風景

おうちのキッチン

味がわからないとお客様に説明ができないのですが、飲食店をやっていると中々ゆっくりと晩酌する時間がとれません。伝票をチェックしながら飲んだり。

だから店の営業が終わってから家に帰り、キッチンに立って日本酒を味見がてら晩御飯をつくります。この時間が1日の切り替えとして作用していて、意外とくつろげる時間。料理ができた頃には、結構酔っぱらっていることも(笑)

日本酒のおとも

主人のつくった「ぐいのみ」

主人が手づくりしたぐいのみが、日本酒を飲むときのお供です。唐津焼、織部焼、志野焼・・・さまざまなものを手がけています。お店でも、骨董品や現代作家さんの作品とともに主人がつくった器も一部使用しています。これからは販売することも検討しています。

死ぬ前にのみたいあなたの1本

「香取90」

千葉県の寺田本家が、無農薬コシヒカリを使ってつくった精米歩合90%のお酒です。多くのアミノ酸を含んでいて環境によって大きく化けるもの、より自然に近く、古典的な製法でつくられたもの、低精白酒などが好です。だから「菩提(ぼだい)もと※」とか聞くとついつい惹かれます。

※菩提もと=日本酒製造に使うもと(酒母)の一種。その中でも起源が古く、平安~室町時代に寺で酒造していた頃用いられていたもの。評判の高かった奈良菩提山正暦寺『菩提泉(ぼだいせん)』が名前の由来。明治期に入り「速醸もと」が開発されてからは一時無くなったものと見られるが、復古の動きにより近年では使用する酒蔵が増えつつある。

あなたの愛用品

いけばなのための「花ばさみ」

日本料理の良さのひとつに、一皿のなかに「四季」が表現されていることがあります。忙しい毎日で、落ち着いて「あぁ、夏になったな」と感じることは少なくなりました。器、食材、そして部屋の設えすべてから「四季」を感じて欲しいので、をはじめてから我流で花を生けはじめました。4つある個室の花をわたしが生けているので、家にも店にも車にも「花ばさみ」があります。はさみにも少しずつ歴史が刻まれてきました。

これから欲しいもの・やりたいこと

日本酒と日本料理に触れる人を増やすこと

この現状で不安なことは多々ありますが、やっぱり日本酒を飲んでくれる人を増やしたいと思います。お米を食べよう、お米を飲もう…お米が好きなので、米の文化を絶やさないよう大切に伝えていきたいです。

<取材後記>

まず協力者を募集してから、美和さんが手を挙げてくださったタイミングの速さといったら!「日本酒のことでしたらぜひ協力させてください」と忙しい合間でご対応くださった姿に、立地が悪いなかでお店が生き残り、愛され続けてきた理由を見たようでした。また日本酒への深い愛を感じました。「気風が良い女性」とでもいうのでしょうか。ハキハキして小ざっぱりしていて気持ちの良いかたです。袖振り合うも他生の縁といいますが、出会えたこと、早々にご協力いただけたことに感謝申し上げます。(関)

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ライター プロフィール

日本酒ライター 友美

関友美

日本酒ライター/コラムニスト/唎酒師/フリーランス女将/蔵人
「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと、日本酒の魅力を発信するさまざまな活動をおこなっています。 全国の酒蔵を巡り取材をしWebや雑誌への記事執筆、カルチャースクールのセミナーや講演、酒蔵での酒づくり、各地の酒場での女将業など、場所と手段を超えて日本酒のおいしさと、地域文化の魅力を伝えています。北海道出身。東京と兵庫の二拠点生活中。
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