「酒造りの神様」農口杜氏のお酒を味わう
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日本酒とクラウドファンディングの相性はとてもよく、目標金額を大幅に超える資金集めに成功した企画は多々あります。
今回、私がクラウドファンディングで寄付をした「農口尚彦研究所」のクラウドファンディングもその1つ。期間残り1ヶ月強にして、目標の1,000万円の倍となる2,000万円を超える資金が集まっています。
「酒造りの神様」の異名を持つ農口杜氏の技術と魂を次世代に伝えるべく始まったこのプロジェクトと、実際に我が家に届いた「本醸造 無濾過生原酒」について紹介します。
農口尚彦杜氏と研究所について
日本酒界の先陣を切って常に走り続け、惜しまれつつも2015年に一度は引退した農口杜氏。吟醸酒ブームや山廃ブームの火付け役でもある彼は、1970年代以降低迷していた日本酒業界の新たな道を切り開いたパイオニアです。
全国新酒鑑評会の金賞常連であり、全27回金賞受賞、うち12回は連続で受賞していたという鬼才。そんな彼が2017年、「情熱を持った若い杜氏と酒造りをする」ため、新たな酒蔵「農口尚彦研究所」を石川県小松市に建設しました。農口杜氏と共に酒を醸すのは7人の若手。中にはポーランド人の杜氏もおり、彼らは日本酒業界の台風の目となる予感がします。
我が家に届いたのは「本醸造 無濾過生原酒
今や吟醸酒がもてはやされる時代であり、醸造アルコールを添加する本醸造酒を好んで選ぶ人はほとんどいないでしょう。しかし私には本醸造酒がとても懐かしく、反面新鮮でもあり、ワクワクした気持ちで開栓しました。
瓶を手に取ると、蓋には封印が施されています。プラスチック製の封印を解き、栓を開けようとすると、少し力を入れただけで中から勢いよく栓が押し上げられ「シュワシュワ」という感触ともに勝手に開いてしまいました。
とても「元気のいい」無濾過生原酒には、若い杜氏たちの溢れんばかりの気概が込められているのではないか?開栓の勢いはそれを反映しているようで、杜氏の魂を受け取ったような不思議な気持ちになりました。
香りはフルーティ。しかし、吟醸香のような酸味を含む香りではありません。たまらず一口。すると、口内は瞬時にとろけるような果実感と瑞々しさに包まれます。
一言で表すなら「甘美」。一杯でここまで心奪うお酒に初めて出会いました。
ファーストインパクトは洋梨系のフレッシュさ。甘みを感じたかと思いきや、喉に通る頃には生原酒特有のびりびりとした力強さを堪能させてくれます。
吟醸酒ではなく、精米歩合も70%。近年の流行とは離れた日本酒にも関わらず、時代遅れな日本酒ではなく、むしろ革新的。飲み終えた後も、しばらく余韻に浸っていました。
レジェンドと呼ばれた杜氏が、人生のフィナーレを飾る場所として選んだのは自身の名を冠す酒蔵。そこで醸された「魂の一本」、ぜひ皆さんも味わってみてください。
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