【コラム】妄想日本酒恋愛①
掲載
特別は日常の中に
日本酒は自分にとって「特別な一本」を見つけやすい。
ちなみにこの場合の特別な一本とは、希少価値や高い酒…という選別ではない。
日本酒には、地域の伝統や歴史、文化があり、造り手の顔が見える。故に、醸される一本
のストーリーを知ることができる。
そこに自分を重ね合わせると、自分にとって特別な一本がおのずと見つかってくるのだ。
例えるなら、失恋した時に必ず聞く、ラブソングのようなもの。
また、その日本酒と出会ったシチュエーションが強く印象に残っていたり、人生の転機に
飲んだ一本だったり…そういったところからも自分にとって特別な一本になる。
簡単に言うと、「あの時飲んだあの酒が忘れられない」というヤツだ。
特別な一本は、特別であったとしても、私たちの日常にいくらでも転がっている。
飲まずして恋に落ちた瞬間
数ヶ月前のこと。
働く環境が変わって、初の酒蔵取材同行。
場所は新潟県中越にあります魚沼酒造株式会社。
酒蔵や取材自体は初めてではなかったものの、初めて受ける会社からの酒蔵取材。
それなりに緊張もしていた。
しかも当日、先輩ライターさんが取材ノート忘れ一気にのしかかるプレッシャー。
まして、実はこれまで全然知らなかった酒蔵さん。
代表銘柄「天神囃子(てんじんばやし)」ですら飲んだことがなかった。
頭の中は軽くパニック。
しかし、取材を通していろいろ分かったこと。
この天神囃子という日本酒の名の由来は、この地方で唄い継がれてきた祝い唄の名前。も
ともとは稲作豊穣を祈願する神事唄が、その後蔵開きや田植え、建て前や結婚式などお祝
いの際に唄われるようになり、祝い酒として地元の人たちから親しまれてきたとのこと。
聞けば、誕生は私の生まれた年!
年齢がバレる(笑)からあえて省くが、自分が生まれた年に誕生した銘柄と聞いただけで親
近感が湧いてくる。ましてそれが祝い酒というなら尚更嬉しくなる。
まるで、この瞬間。新しい仕事にエールを送ってもらっているような…そんな錯覚と共に
恋に落ちた。
夜に帰社し、お土産で頂いた天神囃子をすぐに会社の仲間と開けた。
格別に美味しかった。
来年の誕生日は、二人で一緒に乾杯しよう!
※魚沼酒造㈱のお酒は新潟市内の酒屋さんでもあまり出回っていませんが、楽天等ネット
ショップに出店しているので全国どこからでも購入できます。