豊島屋酒造(東京都)見学会【上】 ~日本酒は「工業製品」ではありません~
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そこは、新宿から電車で40分ほどの場所にある正真正銘”東京の酒蔵”。
20代ギャルから40代ダンディまで、職業も性別もバラバラな仲間と一緒に
東京都東村山市にある【豊島屋酒造】さんにお邪魔しました。
迎えてくれたのは、4代目・田中孝治さんと営業部の川上一宏さん。
ご挨拶と注意事項を聞いたあと身支度を整えます。蔵はとっても寒いですからね。
一同、杉玉のもとへ。
杉玉とは、杉の葉を集めて枠組みに差しこんで丸くカットしたもの。
昔から酒蔵ではその年の新酒ができたら青々とした杉玉を軒先に飾って地域の人たちに「今年もお酒ができました」と知らせ、人々は杉玉の枯れ具合をみて「そろそろ酒が熟成してきたな」と知ることができたのです。当時は今のように新酒をすぐ呑むという習慣はあまりありませんでした。
お酒造りの工程通り移動。
洗米→蒸し→放冷→麹→酛→もろみ→搾り→瓶づめ
麹室は、蔵でも限られた人のみ、その数人も入る時は消毒して上半身裸。もしも酒造りに邪魔な菌が入ってしまった日には(有得ない事ですが)、床から道具から天上から全て洗い直し。という徹底管理された部屋!お酒造りは「1に麹、2に酛、3に造り」といいます。それほど重要な工程なのです。
田中さん「その部屋以外すべて見せます」
「よく分かんないけどラッキー♪」「酛まで見せて貰えるの!」「もろみの香りを嗅げるのか」
この時点で知識は違うが、それぞれ大盛り上がりです。
酛(もと)です。別名酒母。大量に仕込む前段階で、小さい桶で雑菌に負けないような強いお酒の元になる酵母菌をしっかり増やすことを酛立て、それ自体を酛と呼びます。
「プチプチ」と音を立てて育っているのが聴こえます。菌がそこで生きている証拠。「かわいいでしょ。コイツら、本当に可愛いんだよ」と言う田中さんに皆も微笑み、静かに耳を傾けます。
8つのタンクすべて全く違う表情。仕込みの時期や酒米や酵母の種類の違い、またはそれらが全部同じでも全く同じ顔にはならないかもしれません。相手は生き物です。
はしごを登り、「タンク内に落ちたら死にます」という注意を受け皆へっぴり腰(笑)
発酵中のもろみを覗き込むと、さっきよりも大きな気泡で勢いよくブクブクとしているのが見えます。ここでも先ほどの酛同様タンク1つずつ記録管理され、大事に見守られ育っていくのです。
と、田中さんから顔をあげるよう促され見渡すと、目に入るのは古い木の梁と広い空間。トラス工法といって柱が1本もないので、部屋中が見渡せます。梁は計算つくされ美しく、100年経ってなお先ごろの大地震にも耐え依然じっとそこに控える。
豊島屋さんの起源は、慶長元年。創業者・十右衛門さんの商才により神田の居酒屋を皮切りに次々と商売を始めます。その1つが灘での3社合同酒造業。その後府中に移転したのち更に移転、その際現在の地で廃業予定だった川島酒造から全てを引き継ぐに至ります。たとえば川島さんの銘柄であろう【庭の松】の名前など、豊島屋の方々でも計れない多くの歴史がそこには在ります。
そして次回は、全員が待ちわびた試飲タイム!(試飲というより大宴会)
予告もあるのでお見逃しなく・・・。
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