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酒と鮨の千一夜・第二十七夜 〜秋の走りの頃「ひやおろし」&「新烏賊」そして夏の名残りに「雪の茅舎」VS「雲丹の茅舎」〜

掲載

上段左・雪の茅舎ひやおろし純米吟醸
上段右・雪の茅舎ひやおろし山廃純米
下段左・新イカ(針烏賊)
下段右・障泥烏賊の新子

夏の名残り、秋の走り、夏の香り、秋の匂い、、、
風立ちぬ九月の始め、港高松「すし秀」での酒と鮨の千一夜・第二十七夜は「ひやおろし」、「新イカ」、「白雲丹」で秋の夜長の始まりです。

1、酒・雪の茅舎「ひやおろし」


◎雪の茅舎ひやおろし純米吟醸
◎新イカ(針烏賊・讃岐庵治)
◎白雲丹(キタムラサキウニ、牡鹿半島金華山沖)


◎雪の茅舎ひやおろし山廃純米
◎障泥烏賊新子(讃岐三本松)
◎白雲丹(キタムラサキウニ・利尻礼文)

秋の始めの日本酒はなんと言っても「ひやおろし」で幕を開ける。選んだ酒は「雪の茅舎」。
本来、酒はネーミングやジャケットで選ぶものでないが、私は「ジャケ買いのすすめ」で、ラベル、ネーミング、ジャケットから造り手のコンセプト、意思を読み取り、その季節感も味わい日本酒を楽しむことを提唱してきた。そう言う面から言うと雪の茅舎は季節感は全く違うように思えるが、実は雪の茅舎こそが、「ひやおろし」の季節感をそのままに伝えるものである。なぜなら、屋根に雪が積もる極寒の冬から、茅舎にまだ雪が残る春の始めに搾った新酒を春から夏を越えて秋の味わいとして我々の手元に届く。そう、まだ、夏の名残りの暑さの残る秋の始めに、その酒が搾られた深々と雪の降り積もる雪の茅舎をはたまた、春の便りを聞きながらも屋根に雪の残る茅舎を思い浮かべながら味わうことこそが、ひやおろしの正しい味わい方とこの秋に辿り着いた答えである。もっとも雪の茅舎以外のひやおろしを飲むときは、また、違う答えを導き出さねばならないだろう(笑)
今回は新イカ(針烏賊)にはひやおろし純米吟醸を合わせ。障泥烏賊の新子にはひやおろし山廃純米を合わせた。この場合、烏賊云々ではなく、二本の酒の自分の好みを知って選択していただきたい。
酒の項最後に蔵元HPより雪の茅舎の酒造りについての説明を抜粋掲載いたします。

米作りから始まる酒造り

齋彌酒造店では、蔵人自ら、そして地元農家さんと契約して、酒造好適米「秋田酒こまち」を栽培しています。また、兵庫県西脇市黒田庄の農家さんとも契約を結び、最高級酒米である「山田錦」を栽培しています。
酒米の品質は酒造りにも影響します。より良い品質のため、毎年圃場視察を行い、収穫された酒米を分析して、生産者と情報交換の場を設けています。
これらのこだわりの酒米を使用して「雪の茅舎」は醸されるのです。

職人の技で最高の酒質を目指す

高橋藤一杜氏をはじめとする職人の技により、酒造りは行われます。
伝統の技と日々の研究が「酵母の自家培養」や「山廃の復活」を可能にしました。酒母造りで主流となっている「速醸もと」は醸造用の乳酸を添加して仕込む方法ですが、自然の乳酸菌の力を借りて醸す「山廃もと」は育成に時間と手間がかかるため、高度な技術が必要となります。弊社では高橋杜氏が「山廃もと」を復活させ、豊かな風味あるお酒を醸しています。

2、「新烏賊」+「白雲丹」=「雲丹の茅舎」

 
◎新イカ(針烏賊・讃岐庵治)
◎白雲丹(キタムラサキウニ・牡鹿半島金華山沖)


◎障泥烏賊新子(讃岐三本松)
◎白雲丹(キタムラサキウニ・利尻礼文)

今回の鮨は、「新イカ」「白ウニ」「新イカ+白ウニ=雲丹の茅舎」の三種を中心に進めて行きたいと思います。と言っても皆さん「はて?」と言う感じでしょう。個別に説明していきます。
①「新烏賊」
新イカとは、甲イカの子供。
コウイカは国内でもっとも普通の貝殻(甲)を持ったイカ。関東ではスミイカ(墨烏賊)、西日本ではハリイカ(針烏賊)と呼ばれ、すしネタとしても天ぷらネタとしても非常に重要なもの。
味がいいので高値で取引され、ほとんどが料理店などで利用される。
関東では墨にまみれた状態での入荷を好み、中部以西では海水できれいに洗って出荷してくる。関東では昔は墨まみれを好んだが、近年洗ったものでも値が変わらなくなっている。
東京では生まれて間もない、小さいコウイカを「新いか」などといい珍重する。
春に生まれたコウイカは、夏、秋に甲の長さ5センチ前後に育つ。この夏のイカが「新いか」である。一匹でせいぜい一貫、もっと小さなものになると2匹で一貫にしかならない。本来江戸前では初秋の味わいだったが、今では九州などのものが初夏から夏に多く入荷してくる。
我々瀬戸内の人間は秋が「新イカ」の季節だ。同時にアオリイカ、ケンサキイカの新子も瀬戸内海では出てくる。
味わいはもうときめきの世界だ。新イカ、アオリイカの新子も味よりもその滴る舌触りの柔らかな優雅に若い誘惑は虜にならざるを得ない。
大人のその舌にまとわりつく隠微な誘惑とはまったく別物な幻惑の世界の扉を開く。

②「白雲丹」白うにとは東日本のキタムラサキウニ、西日本のムラサキウニの通称である。今回は北海道の利尻礼文とものと三陸金華山沖のものを食したが、利尻礼文は「赤うに」エゾバフンウニのメッカであり、解説は三陸金華山沖のものをさせてもらう。
牡鹿半島は、宮城県の最東に突き出た半島です。
その近辺「三陸金華山沖」は、世界でも有数の漁場に数えられる魚介類の宝庫です。
この金華山近くの漁場から天然のキタムラサキウニが水揚げされます。
ウニの漁は5月から9月までの開口期間中に限定されています。
素潜りで海底からすくい上げる昔ながらの漁となっています。その時期ウニ漁は早朝から漁師さんが海底のウニを素潜りでとるので天候に左右され、また資源保護のために漁獲量も調整されています。
味わいは、あっさりした上品な甘みが特徴と言われる。それはエゾバフンウニの濃厚な甘味に比較してのものだ。どっちが美味いかは、その時々の気分でいいと思う。味の違いはわかってもどちらが旨いかは、それぞれの好みと言うことで。

③「雲丹の茅舎」
これは、イカを屋根に見立て、雲丹を雪に見立て、酒の「雪の茅舎」に対抗してみた。まあ、駄洒落にもならないが、味の組み合わせは抜群に合う。それだけは間違いない。

おしまいのページで・・・

第二十七夜と言うことで、27と言う数字にこだわってみた。プロ野球の背番号で見ると、圧倒的に名捕手に多い。森、大矢、古田と時代を作った捕手が多い。ここは個人的に日本一の捕手は野村克也と思っているので、27の捕手は却下。森さん大矢さん古田さんごめんなさい(笑)
と言うわけで前回同様に私が27歳の1989年を覗き見た。1989年は昭和が7日間で終わり、平成になった年だ。バブルの崩壊は始まっていたとも言われるが、年末には日経平均株価は史上最高値をつけている。
私が昭和の終わりを痛切に感じたのは、6月24日美空ひばりさんの訃報を聞いたときだった。
その頃は転勤で高知に住んでいた。その日は、大学時代の友人の結婚式出席のため、朝一番、羽田行飛行機に乗ろうと、高知駅から高知空港へ向かうタクシーに乗った。そのタクシーのラジオで美空ひばりの訃報のニュースを聞いた。そして、「川の流れのように」が流れた。美空ひばりが特段好きなわけでもないし、昭和の象徴とも思ってはいない。ただ、その時「川の流れのように」を聞いた時、つくづくと「昭和が終わった」と感じた。それは六月梅雨の晴れ間、明け方の空を見上げ、訳のわからない虚脱感に包まれた。同時に新しい時代へ向かう微かな光もみた。その光は幻だったかもしれない。いや、たしかに見た。平成と言う未知の時代への希望と不安。
まだ、結婚式には黒のタキシードにボウタイで当り前のように出ていた頃の話だ。
最近、令和になって、高橋克典が「川の流れのように」をカヴァーしていることを知った。そこには、そのジャケットには黒のタキシードにボウタイで映る高橋克典がいた。その優しい微笑みの先には、よかった昭和の思い出か、それとも未来への光明を見たのか。そのジャケットを見る度に否が応でも昭和の終わりを感じたあの日を思い出さずにはいられない。

最後になりましたが、黒のタキシードにボウタイで、よかった昭和を見つめ優しく微笑む高橋克典さんの写真は「川の流れのように 高橋克典」で検索してみてください。ここには、あの日、東京乃木坂の結婚式に駆けつけた面々のあの頃と今、優しく昭和を見つめる着物の女性を貼り付けておきます。

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ライター プロフィール

日本酒ライター 髙松 巖

髙松 巖

香川県丸亀市で日本酒メインのダイニングバー「星の川」をやってます。こちらでは、季節感溢れる日本酒の魅力をお伝えできたらと思います。よろしくお願いいたします。