生き残りを賭ける酒屋さん 40年以上続く人気店に秘訣を聞いてみた キングショップ誠屋
掲載
埼玉県鶴ヶ島市に40年以上続く酒屋「キングショップ誠屋」があります。鶴ヶ島はいわゆるベッドタウン。広い店内の棚の半分近くを占める日本酒。そのほとんどが、店主である眞仁田清志さん自ら、酒蔵に足を運んで選んだ銘柄です。これだけの量の品揃えを、都内と比べて人口密度が低い鶴ヶ島で売り切るのはすごい。
今の時代、酒屋の経営は厳しい。昔と違ってお客が酒屋でお酒を買うことが減りました。日本人が飲むお酒の主流はビール。酒屋より安く大量に仕入れたスーパーやコンビニエンスストアで、購入するお客が大多数です。「20年前、徐々に売上が落ち始めた中、うちの店にしかないお酒を置くしかないと思いました」と眞仁田さん。
この20年本当に大変だったといいます。ビールの売り上げが落ちる中、それまでのように問屋任せではダメだと付き合いのあった「獺祭」(旭酒造)の社長との縁で、眞仁田さんは全国の日本酒の会に足を運ぶように。「真澄」(宮坂醸造)や「花陽浴」(南陽醸造)など、酒蔵と関係を築きながら、自分が本当に美味しいと思うお酒を店に並べるようになります。
「ところがそうは上手くいかなかった。自分が良いと思ったお酒を揃えたからって売れるわけじゃない」と、現実は甘くはありません。「お客様は知らない銘柄だと良さが分からない。良さを知っているお客様もうちの店に置くようになったことを知らない」とダブルパンチです。それでも眞仁田さんは挫けずに、試飲をしてもらうなどしてお酒の良さを伝え続けたそうです。
「一番は味を見て美味しいと思うものを売っていくという世界があれば、それに賛同してくれる人は付いてきてくれる」と、時間はかかりましたが、着実に日本酒を購入するお客様は増えました。「ここ4〜5年になって、ようやく見通しが明るくなってきました」と、石の上にも三年どころの話ではありません。眞仁田さんの努力は実を結び、今では日本酒の売り上げは店全体の40%を越えました。「どこも有名銘柄ばかり置いているから、こちらに来ました」と都内からわざわざ来てくれるお客もいるとのこと。
ワインブーム、焼酎ブームとお客の求める味は変化していきます。「埼玉の地酒の花陽浴は今ではすっかり手に入りにくくなりましたけど、出来た当初はこんな甘いお酒はウケないと言われていたんです。時代とともに、お客様の味覚が変化しました。造る側だけでなく、売る側もそれに合わせていく必要があると思います」
【キングショップ誠屋】
http://www.k-makotoya.net/
埼玉県鶴ヶ島市富士見2-18-14
営業時間:月・火・木・金10:00~19:00/土・日・祝10:00~20:00
定休日:毎週水曜日/第2日曜日(年末年始を除く)