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コスパ最高と呼ばれる黒澤酒造「黒澤 生酛」 食卓の料理に寄り添う生酛造りの日本酒にかける想いとは

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日本酒における生酛造りをご存知ですか? お米に含まれるデンプンを麹が糖化し、その糖分を酵母がパクパク食べることでアルコール発酵させて造るのが日本酒ですが、この酵母を育てる酒母(酛)には乳酸を入れ、雑菌を排除して酵母が働きやすい環境にする必要があります。そこで、最初からできあがった乳酸を入れる「速醸」と、自然の乳酸菌を一から育てて入れる「生酛」での造り方があります。

「黒澤酒造」黒澤孝夫社長(左)と洋平杜氏(右)。兄弟で蔵を守っています(画像提供:黒澤酒造)

「黒澤酒造」黒澤孝夫社長(左)と洋平杜氏(右)。兄弟で蔵を守っています(画像提供:黒澤酒造)

生酛造りは、蒸米・麹・水をタンクに入れて酒母(日本酒のもと)を造る段階で、水分を含んで山盛り状になった膨れあがった蒸米と麹をすり潰しておかゆ状(酛摺り)にします。この作業がとても大変であり、一番大事でもあります。そして、ゆっくり温度を上げ下げして糖化と乳酸菌の増殖を促します。2週間ほどすると、乳酸菌の出した乳酸によって雑菌が居ない状態になるのでここに清酒酵母を入れて酒母が完成するのです。この酒母からでき上がったお酒は「甘・酸・辛・苦・渋」の五味が調和した複雑な味わいとなります。

(画像提供:黒澤酒造)

(画像提供:黒澤酒造)

「速醸」が10日間ほどで仕込みを終えるのに対し、「生酛」はおよそ2〜3倍もの時間がかかる、実に手間暇とコストがかかる造り方です。しかし、生酛で造られた日本酒は力強くてコクがある味わいになります。日本酒好きなら最終的には生酛にたどり着く人が多いと言われる、昔ながらの日本酒の造り方であり、この生酛造りでの日本酒に注力しているのが長野県の黒澤酒造です。

手間暇かかる生酛造りなのに安すぎるその理由とは

黒澤酒造外観(画像提供:黒澤酒造)

黒澤酒造外観(画像提供:黒澤酒造)

「甘・酸・辛・苦・渋」の5味による絶妙なバランスの生酛の日本酒を醸す黒澤酒造は、1858年に創業しました。日本にある醸造所の中でも屈指の高所と言われる、北八ヶ岳山麓・千曲(ちくま)川上流の標高800メートルの高原の佐久穂町にあり、冷涼な気候の澄んだ空気と良質な伏流水を活かし、長野県産米を使った地域に根ざした酒造りを行っています。

平均的な日本酒の値段は四合瓶(720ミリリットル)で1500円ですが、生酛造りとなると多くの酒蔵が平均を上回る2000円弱の値段をつけます。仕込み計画が大変、やればやるほど場所と道具が必要、とにかく体力と気力を使って時間もかかる、まだ分からないことが多いため、コストを考えれば仕方が無いのですが、黒澤酒造では1500円弱で多くの生酛造りの酒が買えるのです。

リーズナブルな価格で生酛の日本酒を提供できるのは、自社で精米機を持っていることと原料のお米は一部自家栽培していることからコストが抑えられる、そして何よりも長年生酛造りをしてきたことで得たノウハウがあり、商品の6割が生酛造りという“生酛造りのスペシャリスト”だからです。

生酛造りに注力するのは食中酒でありたいから

黒澤酒造の利き酒会でお話をする黒澤酒造株式会社営業部 三井貴司さん

黒澤酒造の利き酒会でお話をする黒澤酒造株式会社営業部 三井貴司さん

近年の日本酒は香りが高い吟醸酒が好まれる傾向にありますが、ともすれば食中酒と言うよりは食前酒の位置づけのものが少なくありません。やはり毎日の食卓に並ぶ料理に寄り添った飲み飽きしない食中酒を造りたいという思いから、黒澤酒造では幅広い料理に合う生酛造りに注力しているそうです。「幅広い味があるけど、料理の邪魔をしないお酒」が目指す酒の味であり、実際に「生酛は日本酒って感じがするよね」という声も多く聞かれます。

天然の乳酸菌を使うためコシが強い酵母になり、できあがったお酒がへこたれず、時間が経過するほど味がまろやかになるため、3〜5年寝かして飲むと熟成してより美味しくなるものもあります。また、熱燗(55℃)からぬる燗(45℃くらい)にして飲むとより旨味が味わえるとのことです。吟醸酒だけが日本酒ではありませんので、家庭料理と合う日本酒をお求めの方はぜひ一度黒澤酒造の日本酒を試してみませんか?

黒澤酒造の生酛の日本酒紹介

黒澤酒造の生酛の日本酒紹介

黒澤酒造(長野県)の生酛造りの日本酒

●黒澤 純米生酛80
原料米:長野県産ひとごこち100%
精米歩合:80%
アルコール:15%
酵母:K901
おすすめ:常温〜熱燗

「磨くだけが能じゃない」低精白の旨味にハマってください。複雑で深みのある味わい。うすにごり生酒タイプもあります。

●黒澤 純米生酛新緑生
原料米 麹:長野県産ひとごこち
原料米 掛:長野県産ひとごこち

精米歩合:65%
アルコール:13.5%
日本酒度:−1
酵母:非公開
おすすめ:冷

新緑の若葉のようにみずみずしく力強さを感じさせる味わい。吟醸酵母で醸した低アルコールの生酛純米生酒ですが、それを感じさせない深い味わいです。

●黒澤 純米吟醸vintage
原料米:長野県産美山錦100%
精米歩合:55%
アルコール:17.5%
日本酒度:5
酵母:非公開
おすすめ:冷

二夏以上じっくりと蔵内で熟成させたバランスが良く深い味わい。シャープな切れ味で余韻の深さをお楽しみ頂けます。

●黒澤 純米大吟醸金紋錦
原料米:長野県木島平産金紋錦100%
精米歩合:45%
アルコール:16%
日本酒度:5
酵母:非公開
おすすめ:冷

長野県木島平村が主産地の希少な酒米「金紋錦」を初使用で醸した純米大吟醸。心地良い甘さと軽快な酸が特徴です。豊かな味わいをお楽しみください。

黒澤酒造

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ライター プロフィール

乃木章

乃木章

小説家/ライター/日本酒唎酒師/鶴ヶ島まちおこし委員会会長。
地元の酒屋さん「キングショップ誠屋」眞仁田社長との出会い日本酒を飲み始める。お酒は苦手だったのに、日本酒が好きになって以来、地元を中心に日本酒好きな人を増やそうと月1で日本酒イベントを開催している。
@Osefly

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