『今宵にほんしゅ三昧』蔵のストーリーに涙が止まらない。感動の日本酒本・3作品
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ひとりでそっと夜に浸りながら呑むとき、手元でなんとなく読んでもらいたい。日本酒にまつわる情報やお話しを日本酒ライター・友美がお届けする連載です。
- あなたは、日本酒がお好きですか?このページをご覧いただいてるからには、興味はあることと思います。
- では、たくさんのお酒がある中で、日本酒を飲むのはなぜでしょう?
- わたしならこう答えます。
「①美味しいから。②物語りがあるから。③文化や伝統と切れる縁があるから。④自国の酒だから」と。
- 時代が変わり、景気が変わり、ニーズが移ろいます。いつの時代もその現場には、悩める人間の姿があります。先代までの重ねた厚い歴史を壊すわけにはいかないけど、それぞれの造りたい酒がある。伝統と革新、保守と進化。全ての願いが、綺麗に揃うわけはありません。
- それから日本酒の蔵は、今時珍しく世襲制度が多く残る世界。
- 小さいころ誰しも、なりたい職業や夢を聞かれますが、選択肢がなく将来が決まっている。それが彼ら/彼女らなのです。
- だけど、こんな自由な時代ですから、反発して俳優を目指す者もいれば、親の勧めで関係のない職種のサラリーマンになる者、迷いなく醸造を学ぶ学校を出て継ぐ者もいます。
- 蔵の数…いいえ、そこにいる人の数だけストーリーがあるのは当然といえば当然ですよね。
- やれ日本酒度だ、酸度だと言われる昨今。
- そんな事よりも、私たちが語るべきことは沢山あるはず。自国を愛し、目の前の味に酔いしれ、広がるストーリーを噛みしめる―そんな純粋な飲み方を、したいものです。
- その入口として、日本酒にまつわる人間模様に心動かされ、追い求めた方々の本を3作品ご紹介します。
- いつの間にか物語に入りこんで、涙こぼれること必至です!
蔵を継ぐ 山内聖子
- 著者と同世代の若い蔵元を集めた、今すぐ読むべき話題書です。
- これから来る!というよりは、既に日本酒好きには名の通った大注目の蔵ばかりですが、著者と蔵の方との親しさがうかがえる身近に感じるストーリーばかり。気軽な文体でスラスラと読めるので、彼らの酒を、その素顔を垣間見ながら、一献、といきましょうか。
- 第1章 冩樂 宮森義弘
- 第2章 廣戸川 松崎祐行
- 第3章 白隠正宗 高嶋一孝
- 第4章 十六代九郎右衛門 湯川尚子
- 第5章 仙禽 薄井一樹
愛と情熱の日本酒 山同 敦子
- 今や、雑誌の日本酒特集で彼女をみない事はない!というほど、発言力があり、日本酒に関する書籍も数多く発行する著者です。その中でも本書はわたしが、日本酒にのめり込むキッカケのひとつとなった本。
- とある酒造会社では、採用試験にこの本が使われるとか。蔵のこだわりや紆余曲折を取材していく著者とともに行動している感覚になり、感情移入していく良書です。ポロポロと溢れる涙を止められません。
- 第1話 喜久醉 青島孝―
- 第2話 醸し人九平次 久野九平治
- 第3話 凱陣 丸尾忠興
- 第4話 王祿 石原丈径
- 第5話 奥播磨 下村裕昭
- 第6話 十四代 高木顕統
- 第7話 飛露喜 廣木健司
- 第8話 秋鹿 奥裕明
- 第9話 磯自慢 寺岡洋司
日本人も知らない日本酒(さけ)の話―アメリカ人の日本酒伝道師 ジョン・ゴントナー ジョン・ゴントナー
- 2006年、日本酒造青年協議会から「酒サムライ」にも認定された著者。海外で日本酒のプロフェッショナル育成のプログラムを開催したり、「Sake World Newsletter」という全英文でのメールマガジンを配信し続けるなど、国内外で精力的に活躍する著者から教わることはとても多いでしょう。
- 海外から来たからこそ、よく分かる日本の良さ。幾つものストーリーに感動して、自国を見直すキッカケをくれる素晴らしい1冊です。
- 1.酒を仕事にする決意
2.鑑評会での恥ずかしい事件…
3.リーデル社の作った大吟醸グラスとは!?
4.イギリス人の蔵人発見!初めての酒蔵訪問へ…
5.利き酒コンテストで優勝する秘術?
6.それぞれの蔵に秘訣があり、特徴がある
7.戦後、初めて「米」だけで酒を造った酒蔵は…
8.やっと「酒と食」にこだわり始めたアメリカ人
9.僕の晩酌
10.燗にすると、おいしいお酒〔ほか〕
以上、多くのある日本酒本のなかでも、気軽に手をのばせて、心震わせる3作品でした。
- お酒を酌み何もない時間をすごすのも、贅沢な呑み方ですが、そんな時そばに、蔵の頑張る方々のストーリーが詰まった作品があれば、「まぁ、明日の仕事も頑張るか!」という、前向きな気持ちにしてくれるでしょう。ぜひ手にとって見てくださいね。