今年はこの新酒に決めた! プロがしぼりたて日本酒を選ぶ「新春新酒顔見世会」
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昨年秋の新米を用いた新酒を試飲できる「新春新酒顔見世会」が1月17日、主催の「日本名門酒会」本部(東京・馬喰町)で開催。74本もの「しぼりたて」の日本酒が出品されたほか、3つの酒蔵がブースを出展しました。
日本名門酒会は1975年2月に「良い酒を佳い人に」をスローガンに、酒蔵(蔵元)と酒販店の間に立つ株式会社岡永が発足。良質な日本酒をお客に届けるだけでなく、情報発信と交換を日々行っており、現在は120の蔵元と1700あまりの酒販店が加盟しています。
このような試飲会では「酒吐き」が用意されているので、基本的に呑み込まずに味わうだけです
この日開催された試飲会には、日本名門酒会の会員である酒販店、その酒販店と取引きしている飲食店関係者、合わせて150人あまりが参加。気に入ったお酒はその場で注文でき、地下1階の試飲会場では「しぼりたて」の日本酒を真剣な顔で飲み比べる参加者が見られました。
日本名門酒会が提案する「しぼりたて」とは、秋の新米を用いたできたてのお酒を、火入れしない生酒のまま貯蔵して出荷すること。華やかな香りと弾けるようなフレッシュさが魅力で、夏を越して熟成された秋の「ひやおろし」や冬の「寒おろし」とは正反対の味わい。試飲できる74本は全て「本醸造」「純米酒」「吟醸酒」などがラベルに表示された特定名称酒です。
日本名門酒会企画部副部長の田村哲夫さんは、「しぼりたてのお酒の味わいでその年のお酒の傾向が見えてきます。原料となるお米の出来は毎年違うのですが、2016年と比べて2017年のお米は全国的に溶けやすいため、甘みや旨味のあるお酒が揃ったと思います」と語りました。出展しているお酒の中には、すでに予約完売している商品もあり、人気の高さがうかがえます。地下1階は試飲会場でしたが、1階には蔵元のブースがあり、話をうかがうことができました。
試飲会場には酒販店で役立つ販促POPが置かれていました
「浦霞」株式会社佐浦 宮城県
営業課長の萩原浩さんと「浦霞 特別純米しぼりたて」
宮城県塩竈(しおがま)市の港町にある株式会社佐浦が醸した新酒「浦霞 特別純米しぼりたて」は、宮崎県産「ササニシキ」で造ったフレッシュで甘い香りとふくらみのある味わい。1月上旬に造ったばかりで、すき焼きなど甘口の料理、脂がのった寒ブリや寒鱈などの魚料理と相性が良いです。
「あとやっぱり、今の時期なら牡蠣ですね。牡蠣のプリプリした歯ごたえ、みずみずしさと一緒に、新酒ならでわの香りと風味を味わっていただきたい」と営業課長の萩原浩さん。30年以上前から「しぼりたて」は造っているそうですが、「近年はだいぶしぼりたてや新酒が浸透して来て、心待ちにしている人が増えたのを感じています」と語りました。
「司牡丹」司牡丹株式会社 高知県
社長の竹村昭彦さんと「司牡丹 船中八策 しぼりたて生原酒」
高知県高岡郡にある司牡丹株式会社が出展したしぼりたては、スッキリとキレる口当たりの良い本醸造「司牡丹 しぼりたて 土佐の超辛口」と、フレッシュな香りとふくよかな味わいの純米酒「司牡丹 船中八策 しぼりたて生原酒」の2本。どちらも超辛口で、「今の流行りである甘いお酒の正反対だと思います。辛口は旨味が少ないと言う方もいますが、生酒にすることで旨味が出せています」と社長の竹村昭彦さんは語りました。
辛口と言ってもそのままの意味の辛さではなく、淡麗な味わいであるということ。司牡丹のお酒は辛口の酒が多い高知県でも超辛口の造りで、お客からは「高知県のお酒らしい」との声が寄せられるそうです。
「生酒も含めて弊社のお酒は和食に合います。お酒だけで飲んだら物足りなくても、料理と一緒に味わうことで真価を発揮する食中酒です」と竹村さん。純米酒のしぼりたては原酒のためアルコール度数がちょっと高いので、「飲み飽きしないお酒なので、飲み過ぎに注意してください(笑)」とのことです。
「大山」加藤嘉八郎酒造株式会社 山形県
営業企画担当の加藤嘉晃さんと「大山 特別純米 しぼりたて」
山形県鶴岡市にある加藤嘉八郎酒造株式会社は、本醸造の「大山 本醸造 しぼりたて」と純米酒の「大山 特別純米 しぼりたて」の2本を出展。本醸造のしぼりたては、フレッシュで爽やかな味わい、純米酒のしぼりたては口当たりが柔らかく後味はドライで、どちらも山形県産のお米を用いています。
「7年前から山形産の酒造好適米『出羽の里』で酒造りをしているのですが、純米酒のしぼりたては、歴代最高の出羽の里で醸しています」と手応えを語る営業企画担当の加藤嘉晃さん。山形県でも海沿いにある蔵元なので魚料理と相性が良く、「脂がのっている寒ブリや味の濃い料理、とくにアンコウ鍋とは最高に合うと思います」と語ってくれました。
おつまみの試食や甘酒の試飲もできます
今年も多くの新酒が見られた試飲会。参加者からは「毎年ここで10銘柄は注文しますね」「今年はどこが美味しいか楽しみにしています」「これだけ飲み比べられる機会は貴重ですね。お店で出す料理と合う日本酒を選ぶのに助かります」などの声がありました。新酒には熟成させた「ひやおろし」「寒おろし」と呑み比べする楽しみもあるので、お酒好きには本当に嬉しい時期ですね。
会場にはさりげなくバレンタインデーの企画展示も
<日本名門酒会>
<独立行政法人 酒類総合研究所 「清酒原料米の酒造適正予測」>
2016年のお米は例年に比べて「溶けにくい」と発表(平成28年産の清酒原料米の酒造適正予測より)。
2017年のお米は2016年に比べて「溶けやすい」と発表(平成29年産の清酒原料米の酒造適正予測より)。