お燗番が考える、お酒が弱い方にこそ試して欲しい日本酒の飲み方
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様々なお客様を接客して、よく言われることは
『日本酒は次の日に残るから・・・』
『アルコールがきつくて量が飲めない・・・』
『すぐに酔うから飲みたくない・・・』
近年、若者がアルコールを飲む量が減ってきているなんてニュースで報道されていたこともありましたが、特に日本酒が避けられがちな気がしてなりません。
僕も身体がアルコールに弱く、最初は日本酒を避けていましたが・・・。
恥ずかしいお話ですが、今でも仕事柄お酒をテイスティングして、飲むお酒によってはフラフラしてしまいます。
ですが、そんなジョッキビール1杯で具合が悪くなってしまうアルコールに弱い体質の僕だからこそ、
お酒が弱い方に試して欲しい日本酒の飲み方を日々の営業でお伝えしています。
どのような飲み方をすれば良いのか具体的にご説明したいと思います。
まずは『お燗にする』ことです。
「燗酒はすぐに酔うから・・・。」と避けられがちですが、アルコールに弱い体質の方が多い日本人にとって無理して量を飲む必要はありません。
冷酒で飲むと胃の温度が下がるため、一旦胃の活動が止まってしまいます。
確かにアルコールの吸収は遅くなりますが、それを良いことに飲み続けたら胃の温度が戻り、活発に動き始めた時に一気に身体にアルコールが回って具合が悪くなってしまいます。
つい飲み過ぎてしまう原因にもなりますね。
飲みすぎないためにもお燗にして飲むことによって、すぐに酔えるので飲み過ぎることなくお酒を楽しむことができるのです。
そして、もう一つの方法があります。
それは『割り水燗』をすることです。
お酒によって量は異なりますが1割、2割お水を加えてお燗をすることで、アルコール度数が下がるので優しい口当たりになります。水とよくなじませる為に、最初に水を注いでから日本酒を注いで、じっくり温めるのがポイントです。
ただし、お酒によっては味のバランスが悪くなることもあるので濃醇な味わいのお酒で試していただくことが良いと思います。もちろん、水も水道水ではなく、天然水や日本酒の仕込み水が良いです。
さて、ここからはある程度のスキルが必要になりますが、実際に僕がお店でアルコールに弱い体質の方に特にお勧めしているのがお燗と割り水を応用した『熟成酒の割り水燗』です。
どうしても新しいモノが良いと思われがちで、「新酒」や「しぼりたて」をよく求められますが、実は造りたてのお酒ほどアルコールの刺激が強く、酔いやすい。
逆に熟成したお酒はアルコールの刺激が少なく、酔い醒めも非常に良いのです。
アルコールが飛んだのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが違います。
まだ研究段階なのですが、熟成年数を重ねれば重ねるほどお酒の中で変化が起こり、水のクラスターがアルコール分子を包むからだと言われています。
因みに、江戸時代の文献にも「新酒は頭ばかり酔う。熟成酒は身体全体が潤うように気持ち良く酔う」と記されています。
また熟成酒は、新酒の時とは違い、お酒の中で様々な成分が化学変化を起こし、味に深みが出ます。簡単に言えば、濃い味わいになるのです。
芯がしっかりしているお酒程、割り水をかけてもバランスが崩れません。
よってアルコールの刺激が和らいだ熟成酒に、割り水をかけてお燗をすればアルコールに弱い方でもより楽しむことができるのです。
ただし、全ての日本酒が熟成に耐えうる酒質かと言うと、そうは言い切れませんので、あくまでも熟成酒を正しく理解している酒販店やお燗番がいる飲食店で楽しんでいただく事が一番良いかもしれません。
最近では消費者の熟成酒への関心も高まってきているそうなので、アルコールに弱い方にも是非楽しんでいただきたいです。
さて、最後はちょっとマニアックな方法でしたが、お酒に弱い体質の方は上記のような方法で上手にお酒と付き合ってみては如何でしょうか?